歓楽街だった西川口「夜のタクシー今や激減」の訳 かつては「人が来る場所」だったのになぜ?

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歓楽街や中華系の店が集中する西口のタクシー乗り場には、この場所で20年近く営業するドライバーの山田さん(仮名・60代)がいた。

「昔の西川口はね、歓楽街として人が“来る”場所だった。だからタクシーも需要があって、都内へのロング客を乗せられる美味しい場所だった。今では目立たなくなったけど、ヤクザ屋さんもたくさんいて、つまりは金になる場所だったわけ。

それが警察の風俗店の一斉摘発などを経て、一気に人が消えて、飲み屋の数も減った。そこに狙ったように中国人が大挙してきたわけ。ただ“住む場所”になって、タクシーにとっては決していい場所とは言えなくなった。一つだけ確かに言えることは、以前より治安が悪くなったということかな」

2000年代初頭、西川口はNK流と呼ばれた違法裏風俗が全盛の時代だった。200店舗を数えたという違法風俗を目当てに全国から男性たちがこの街を訪れ、金を落としていった。

警察の一斉摘発によって激変

だが、2004年に埼玉県警が「風俗環境浄化重点推進地区」に指定するなどして、一斉摘発に乗り出したのを受けて壊滅。現在も歓楽街は残るが、当時の活気を知るものからすれば比べものにならない、と山田さんはいう。東京からほど近い立地を活かし、出張族や旅行客を中心に都内のホテルまでという優良客があふれていた、と当時を回顧する。

「川口市周辺は今でこそ住みやすい街なんて言われるけど、商売人にとっては『昔のほうが良かった』という人も多いよ。人口は増え続けて、たぶん埼玉で一番変わった街だと思う。どこにでもある面白みの少ない街になっちゃった。だから遊びに来るという人の数は激減した。

昔は何十年も続いていたような家族経営の小さな店があって、人情味あふれる場所だった。そんな街に惹かれてか1万円を超えるようなお客さんもたくさんいたけど、今ではほとんど乗せることもなくなって。今や大手チェーンと中華系の店ばかり。要するに外の人からしたら、昔のような来たい場所じゃなくなったんです。

皮肉なのは、そうやって潰れていった個人商店の人たちは職がなくて、タクシードライバーになった人も多いことです」

少し補足を加えるなら、川口、西川口、蕨といった近接は似て非なるものだと考えていい。川口駅周辺は、都内から30分圏内という立地を活かし、マンションの建設ラッシュが続き現在も移り住む人は増加の一途をたどっている。一方の西川口周辺や蕨市では、主に中国人やアジア系の人々が住む団地や低価格マンションも増えているというという。

では、彼らのタクシー利用は実際にどのようなものだろうか。

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