「おみくじは、神社だけでなくお寺にもあります。神社では神意(しんい)をうかがうのに用いますが、お寺では仏意(ぶつい)ということになります。仏意とは仏の御心のことです。人々は勝敗・当落・順番などを決めるのに、人知を超えた神意や仏意にうかがいを立てたのです。それが籤であり、それが神意や仏意であるので、みくじ(神籤・仏籤)と表記し、さらに尊敬の接頭辞『み』を重ねておみくじ(御御籤)ともいいました。
現在のおみくじは、紙片を用いるものが一般的ですが、以前は、こより・木片・棒などに文字や符号などを記し、それを引いたり、御幣で釣るという方式がありました。また、みくじ筒を振って、筒底の小さな孔(あな)から一本の細長いみくじ棒を取り出し、その棒の先端に記された数字と同じ数字のおみくじを受け取るという仕方も広く知られています。
なお、おみくじは切替畑の割替え、漁場の利用、用水の引水の順番などの決定にも活用されましたので、民衆の大きな関心事の1つであり、それだけに、とても人気がありました」
語源も諸説あり、ユニークだ。
① 「奇し」説=奇なことを起こすから、
② 「串」説=竹製の串(くし)のような棒状の物を使うことが多いため。
③ 「抉(くじ)り」説=「抉り」は、結び目を解く道具。結び目に霊魂が宿る。箱などに入ったものをえぐって外に出す意。
④ 「鬮子(児)」説=鬮は中国で、ゲームや神事に使われた小型の円盤状のくじ。発音は「ク」で、小さいという意味。
⑤ 「孔子(くじ)」説=10世紀ごろから見られ「孔子」と書かれた。「孔」は穴のこと。「孔子(くじ)」は小さい穴のこと。
誰にも答えがわからないことの答え
人間は誰もが迷う。そんなとき、人々はくじにたずねてきた。何千年経った今でもおみくじが残り、現代人である私たちでも「おみくじを引きたい」と思うのは、頼りにするものの1つだからだろう。
「右に行くべきか左に行くべきか、AとBのどちらを選ぶべきか。迷いに迷ったときに、即座に答えてくれるのがおみくじです。神さま・仏さまは、いつも皆さんの幸せを願っておられますから、私たちはおみくじを素直な気持ちで受け止めることが大切となります。おみくじにより、私たちは時には励まされ、時には戒められますが、それらを生活の羅針盤として活用することが正しいおみくじの活用法だと思います」
誰にもわからない答えだからこそ、偶然に委ねてみる。それこそが神意でもあると三橋氏は説く。
最後に、おみくじを引く際の作法を聞いた。
「おみくじを引く前に厳守することは、かならず神さま・仏さまに祈念することです。大切なことですので繰り返しますが、まずお参りして、その後で、おみくじを引くのが正しいやり方です。また、おみくじを引いて大凶が出たので、吉が出るまで二度も三度もおみくじを引く人もいますが、これは神さま・仏さまを疑っていることになり、とても礼を欠くことになりますので厳禁です。
引いたおみくじは境内の『おみくじ結び所』に結ぶといいでしょう。境内の樹木に結びつける人もいますが、これは木々を傷めますので避けたいものです。また、おみくじは聖なるメッセージなので、手元に置いて、時々読み返すことをお勧めします」
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