「占い」を客観的な視点でさまざまな角度から検証する本連載。今回は、お正月特別編をお届けする。初詣でおみくじを引く人も多いだろう。筆者は数年前の元旦に「大凶」を引いたことがあり、かなり落ち込んだ。しかし「それは最もありがたいおみくじ」だったようだ。神道学者の三橋健(みつはしたけし)氏に、おみくじについて聞いた。
最良のおみくじは?
まず、誰もが気になるのが、「吉と中吉はどっちがいいの?」など、おみくじの「結果」だろう。一般的な吉凶の区分は以下の通り。
大吉・中吉・吉・小吉・半吉・末吉・末小吉・凶・大凶
最近はおみくじもバラエティ豊かになってきており、例えば京都の伏見稲荷はこの区分が32にも細分化されているという。たとえば、「凶後大吉」「吉凶相半」「向大吉」などである。このように区分が細かくなってきたのは、人々が平穏を好まず、刺激を求めるからだと三橋氏は指摘する。
「かつての人々は『平(たいら)』というおみくじが出ることを期待しました。『平』というのは『おだやか』『やすらか』という意味で、よくも悪くもないという、ありきたりの平凡な暮らしぶりのことです。今も何気なく交わしている『お変わりありませんか』という挨拶に、かつての人々が『平』を大切にしていた名残をみることができます。
ところが、時代がたつにつれて、人々の欲望が強くなり、平凡な暮らしぶりに満足できなくなり、刺激を求めるようになります。そこに吉とか凶というおみくじが新しくつくり出されたものと思います。しかし、人間の欲望には際限がなく、吉では物足りなくて、中吉、さらに大吉が求められるようになります。その一方で、吉に対抗して凶や中凶、大凶が生じてくるのは当然なことです。いうまでもなく、おみくじは神さまの御心をたずねることですが、その根底には貪欲な人々の欲望が渦巻いているようにも思うのです」
この「平穏では満足できない欲望」こそが、悩みや苦しみを生む元凶だという。
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