これだけなら美しいストーリー展開を想像できるが、この約束を逆手にとって栄一さんは女性遊びを始めた。当時、出版関係のフリーランサーとしてオタク関連の仕事をたくさん引き受け、一時は年収1500万円に到達。地元の「お姉さん系」のお店を飲み歩くことを覚えたのだ。
「夜の11時ごろに仕事を終えてから飲みに行くような毎日でした。収入が増えて気が大きくなっていたんですね。カードの引き落としが月に90万円ぐらいあった時期もありました。複数の女性と同時に付き合いつつ、『こういう事情があるから結婚はできない』と言い訳もできます。正直に言うと、50歳ぐらいまではそういう生活を続けていました」
フワフワしたまま老後を迎え、一人きりになるのは嫌
ただし、「仕事がバンバン来る」状況は45歳の頃には終わっていた。栄一さんは惰性で遊び続けながらも「次に付き合う女性で最後にしよう」と思っていたと明かす。
「フワフワしたままで老後を迎えて一人きりになるのは嫌だからです」
二股三股をかけて遊んできたのにずいぶんな言いようである。その自分勝手さを相手の女性たちにも見抜かれたのかもしれない。こちらが本気を示すと姿を消してしまう女性もいた。
どこかで心の拠り所にしていた前妻もこの頃には栄一さんと距離を置くようになり、成長した息子たちとも会いにくくなった。栄一さんが自分たちの存在を言い訳にして遊び歩いていたことを察していたのかもしれない。
そんなときに馴染みのスナックで出会って親しくなったのが現在の妻である美里さん(仮名、43歳)だった。長くホステス業をしてきた女性で、スナックの中では「オタク客担当」。他の女性よりはアニメやマンガに詳しいと栄一さんも認める。栄一さんはエロ系の仕事もしているが、それも笑って認めてくれた。
「妹みたいな存在でしたね。気にはなるけれど、女性としては見ていませんでした」
なぜか上から目線の栄一さん。50歳の頃には一念発起して現在の飲食店を開業した。当初、美里さんもアルバイトとして手伝ってくれ、辞める頃に付き合い始めた。
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