「似ている人やよく見かける人」を好きになる理由 なぜ好きになる人の魅力を大きく感じるのか
こうした傾向については配偶者の選択という文脈で検討されることがある(Winch et al.,1954)。研究の対象者は結婚して2年以内、子どもがいないカップルであった。配偶者に望むパーソナリティをたずねたところ、自分のパーソナリティとは反対のものであることがわかった。
「相補性による好意」は、お互いの役割分担が必要な状況や、目標が設定されている状況において生じやすい。問題解決のためのコミュニケーションの場面を扱った研究(Dryer & Horowitz, 1997)を紹介しよう。
「好きな人だから似ている」と思うことも!?
研究の参加者は女性であった。参加者には、別の女性(実際は実験の協力者)と対人関係に関する問題について話し合うよう依頼した。話し合う際には、実験の協力者は主導的もしくは従順的いずれかのコミュニケーションスタイルを演じた。なお、あらかじめ参加者のスタイルも測定されていた。
「コミュニケーションに対する参加者の満足度」を検討したところ、参加者自身のスタイルとは反対のスタイルで相手から応答された場合に満足感が高かった。相互作用が必要な状況では、こうした「相補性の効果」が見られるようである。ただし、この研究の参加者はその点を自覚してはいなかったようだ。
研究では、参加者に「相手のコミュニケーションスタイル」について評定を求めていた。この評定を分析したところ、コミュニケーションに満足している参加者は、「相手のスタイルが自分に似ている」と回答していたのである。
実際には反対のスタイルで応答されて満足していたにもかかわらず、満足して相手を好ましく思ったことが、類似性の知覚を高めていたのである。「好ましい人だから、私と似ているのだろう」という認知だ。わたしたちは、似ている他者を好きになるだけではなく、好きな人だから似ていると思うこともあるのかもしれない。
わたしたちの日常生活においても、「類似性の影響」はよく見られそうである。
自分の部下が、仕事に対して自分と同じような取り組み方をしていれば好ましく思うだろう。もしかしたら、同じ学校の出身とか趣味が一緒というだけでも、その部下を肯定的に評価してしまうかもしれない。
部下もそうした「類似性の効果」を知っていて、上司との共通点を強調したり、さらには上司と話を合わせたりすることもありそうだ。
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