日本のサイバー防衛が心もとなさすぎる3つの訳 経済安全保障の核となる領域の体制整備を急げ

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日本のサイバーセキュリティは国際的に低評価。その歴史的な背景としては3つの要因がある(写真:metamorworks/PIXTA)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

サイバーセキュリティ新時代へ

2020年からの2年間、人類はグローバルパンデミックを経験した。サイバー空間の恩恵や課題を意識する歴史的な経験を共有した。

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一方で、サイバー空間の濫用や悪用による新たなインシデントを多数経験した。特に、技法としては古典的であった電子メールの添付ファイルによる攻撃が、暗号通貨と組み合わさることによるランサム攻撃は、Covid-19に苦しむ医療機関やエネルギーなどの重要インフラストラクチャーへの致命的な打撃を与え、コロニアルパイプライン、ワクチン製造など命に関わるインフラに対しても極めて有効な攻撃となってしまった。

サイバー空間の新たな緊張は空間的なつながりだけではなく、産業構造的な連続性による新たな脆弱性も浮き彫りにした。地経学的なサイバー空間への対応は経済安全保障政策の核となる領域として認識されてきた。

日本のサイバーランキング

こうした中、国際電気通信連合(ITU)は2021年6月28日に「グローバルサイバーセキュリティインデクス(GCI)2020」を発表した。GCIはICT電気通信を担当するITUの開発局が担当するデータに基づいて作られた最新のサイバーセキュリティのインデクスに関する報告書であり、わが国は韓国、シンガポール、マレーシアに次ぐ5位とランキングされ、世界では7位となっている。

一方、エストニアのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援団体、e-Governance AcademyのNational Cyber Security Indexでは40位という評価になっている。ICTの開発評価では10位、ネットワークの整備指数での16位と比較すればサイバーセキュリティ領域では極めて課題があることになる。

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