アメフトと二刀流で挑む「ボブスレー」五輪への道 中学の不登校期間中に「アメフト」と出合い転機

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「僕は中学のときに、不登校で1年間くらい学校に行かなかったんです。高校にも進学するつもりはなかったので。『もう学校に行きたくない』って」

約1年間の不登校期間中、時間だけはたくさんあった。しかし何をするわけでもなく、もちろん何かに挑戦することもなかった。

「人として何もしていなかった」。栗原は当時のことをそう振り返る。

「そのときはまったく幸せじゃなかったですし、まったく楽しくなかったんですよね。僕は当時のことを“暗黒時代”って呼んでいます」

そんなときに出合ったのが、アメフトだった。深夜にテレビ放送されていたNFLの試合をたまたま目にすると、夢中で見入った。

「このスポーツをやりたい、そしてプロになりたい!と思って。高校でアメフトを始めるために、次の日には学校に行きました。そこから人生が変わったんですよね。もしそこで、アメフトに挑戦しようと決めてなかったら……そう振り返ると、やっぱり挑戦することによって人生はつくられていくんだなと感じます」

中学生時代に過ごした、無為な日々。「もう戻りたくない」というほどの経験をしたからこそ、彼は挑戦することの幸せや楽しさをかみしめられるようになった。

北京冬季五輪出場と究極のアスリートを目指して

話を現在に戻そう。今年は北京冬季五輪を目前に控えているため、栗原はアメフトの活動を抑えてボブスレーに集中している。

栗原選手は「失敗してもいいんですよ。自分の才能を活かせる場所を自分で探して、挑戦することが大切」と話す(写真:アンダーアーマー)

ボブスレー日本代表チームは今、北京冬季五輪出場に向けた欧州大会に出場中だ。欧州大会での結果によって、五輪への出場権が決まる。日本は2018年の平昌冬季五輪出場を逃している。だからこそ、栗原の2022年に懸ける想いは強い。

「ボブスレーは前回の平昌大会に出ていないんですよね。なので、まずは北京大会に必ず出ないといけない。2022年1月の最終戦でオリンピックの出場権が決まるので、今の日本代表メンバーで必ず出場権を取りたいと思います」

彼自身は、アメフトとボブスレーの“二刀流アスリート”として、新たなアスリート像を築くことも見据えている。

「日本って『1つのことに集中するのが美徳』みたいな考えがありますけど、これだけ多様性のある世界に変わっているので。1つのことだけじゃなく、いろんなことに挑戦して、自分の才能を活かせる場所を探す。そうすることで、いろんな経験が積めることを証明していきたいです」

固定観念にとらわれず、自分の可能性を突き詰める。そしてつねにアスリートの高みを目指して、トレーニングに励む。栗原は最終的に「究極のアスリートになりたい」と言う。それはなぜか?

「アスリートとして凄い存在になれば、いろんな人にいい影響を与えられると思っていて。それに僕が目立つ存在になれば、アメフトやボブスレーを知ってもらうきっかけにもなる。そのために、僕がどんどん頑張らないと」

「栗原嵩」という人間を“入り口”に、競技を知ってもらう。それこそが、プロアスリートとしての役目だと考えている。だから彼は、“究極”を目指すのだ。

「競技を頑張るのは当たり前なんですよね、プロなので。僕の中では、いかにその競技を知らない人たちに届けるかっていうのがテーマ。だからこそ、わかりやすくてインパクトに残る発信をしつつ、いろんな人にいい影響を届けたいなと思います」

栗原嵩の挑戦は、止まらない。

(文中敬称略)

新妻 翔 フリーライター

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にいつま しょう / Sho Niitsuma

1990年生まれ。埼玉県出身・赤羽在住。立教大学社会学部現代文化学科卒業。2013年、金属業界専門の新聞社に入社し、広告営業を5年経験。2018年、インターネット広告代理店に転職し、約2年間フリーペーパーの広告営業に従事。2020年7月からフリーランスのライターとして活動。Twitter:@niitsu57

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