アメフトと二刀流で挑む「ボブスレー」五輪への道 中学の不登校期間中に「アメフト」と出合い転機

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「そろそろボブスレーを始めよう」

そう思い立ったのは、2019年のことだ。ボブスレーの公式ホームページを見てみると、1週間後に日本代表選手の発掘テストが控えていた。栗原は急いで応募した。

しかしなぜ、彼の人生プランの中に「ボブスレー」の存在があったのだろうか? アメフトとボブスレー、まったく関係のない競技のように思える。

「アメリカでは、NFLの元選手がボブスレー代表に選ばれることが結構あるんです。昔からそういうのを知っていたので」

どうやらアメフト選手のボブスレー挑戦は、とくに珍しいことではないらしい。

例えば、1992年アルベールビル冬季五輪で、当時NFLのスター選手だったハーシェル・ウォーカーが、ボブスレーアメリカ代表として7位入賞を果たしている。日本では、Xリーグのリクルートシーガルズ(現・オービックシーガルズ)などで活躍した安部奈知が、2002年ソルトレークシティ冬季五輪のボブスレー日本代表に選ばれた。

どちらの競技も「体の大きさ・強さ・スピード」を求められる点が共通している。実際、アメフトとボブスレーのフィジカルテストは似ているところが多いという。

「ぼくが受けたボブスレー日本代表選手の発掘テストも、1つの種目を除いて全部アメフトでやってきたことだったので、順応はできましたね」

アメフトで培った能力をボブスレーに

栗原はそのテストで、トップの成績を獲得。2019年6月、晴れてボブスレー日本代表に選出された。

ボブスレーで最も重要な「プッシュタイム」。最後尾でそりを押しているのが栗原選手(写真:公益社団法人日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟)

ボブスレー日本代表に選ばれてからは、アメフトとボブスレーを両立する日々が続いた。アメフトのシーズンが終わると、ボブスレーの活動がメインとなる。実際にボブスレーを始めると、競技の面白さや迫力に圧倒された。

「ボブスレーは迫力が凄いですよ。実際に見ると、とんでもない音とスピードなので、衝撃を受ける。『こんなにすごいんだ!』って思うスポーツのトップクラスだと思います」

ボブスレーは、「氷上のF1」とも呼ばれる競技だ。流線型のそりに乗って、最高時速130km超のスピードでゴールまで一気に疾走する。勝負の分かれ目は、いかに加速させた状態でそりに乗り込めるか。

そこで重要となるのが、スタート時に全員でそりを押し出して加速させる「プッシュタイム」だ。時間にして約5秒。そのわずかな瞬間に、選手たちは全力を注ぐ。

「スタートのときは、どの国も興奮していて、すごい声を出している。異様な雰囲気ですね。ボブスレーというスポーツの最初の見どころで、ほかのスポーツにはない空気感だと思います」

そして加速をつけるために必須となる能力が、先述した「体の大きさ・スピード・強さ」である。

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