メルケル後のドイツ、不安定な新政権に試練多く コロナ再拡大、対ロシア外交、気候変動と難題続き

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外交分野でも早速、新政権の対応が試される。

アメリカのバイデン大統領は7日、ロシアのプーチン大統領とオンラインで会談し、ウクライナとの国境周辺に軍を集結させているロシアが同国に軍事侵攻する場合、欧州の同盟国とともに対ロシア制裁を強化することを示唆した。アメリカは経済制裁の一環で、ロシアとドイツを結ぶガス・パイプライン「ノルドストリーム2」を稼働させないことをドイツに迫っている。対ロシア外交をめぐってはSPDは穏健派、緑の党は強硬派であり、ノルドストリーム2の稼働については、SPDは賛成、緑の党は反対と、連立政権内は一枚岩ではない。

閣僚経験のない外相、脇の甘さも指摘される

新政権の外相には緑の党の共同党首で首相候補として選挙戦を戦ったベアボック氏が就任した。ベアボック氏は同党内の現実主義派に属するが、人権問題などをめぐっては、ロシアや中国に対してより強硬な外交政策を主張している。同氏は外交通として知られるが、連邦・州政府レベルともに閣僚経験はなく、選挙戦でも経歴の誤記載や著作の盗用疑惑が相次いで発覚するなど、脇の甘さと経験不足を露呈した。

メルケル前首相が卓越した外交調整能力を発揮したこともあり、ドイツでは近年、首相府主導で重要な外交案件に取り組むことも多かった。外交政策をめぐる首相と外相との主導権争いにも注意が必要となりそうだ。

また、緑の党は伝統的に反核の立場を採ってきた。新政権は連立合意の中で、今年1月に発効した核兵器禁止条約の締約国会議(来年3月に初回会合が開催)にオブザーバー参加する方針を示唆している。同条約はアメリカやロシアなどの核保有国はもとより、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や日本も参加していない。NATO加盟国でオブザーバー参加を決めたのは、ノルウェーに次いでドイツが2ヵ国目となる。

ドイツは独自の核兵器を持たないが、同国内には同盟国であるアメリカ軍の核兵器が配備されている(核共有)。新政権は核共有を維持する方針だが、NATOへの積極貢献を求めるアメリカとの間で難しい舵取りを迫られる。

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