科学者が懸念する「果糖」の取りすぎが招くこと フルーツに含まれるフルクトースの懸念点

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一方、グルコースは私たちの体内の血液中を循環し、すべての細胞や組織のエネルギー源となります。フルクトースは、この点が大きく違います。もしフルクトースが体内に多いと、肝臓に悪影響を及ぼし、肥満になることがわかっています。

ある興味深い実験があります。1つのグループはグルコース主体のパンやパスタを食べ、もう1つのグループはフルクトースが含まれたオレンジジュースを飲みます。すると、両者の摂取したカロリーが同じでも、後者のほうが肥満になる傾向が強かったのです。

身体に必要なのは「グルコース」

─―フルクトースの害についてはあまり議論になりませんね。

われわれの食べ物の糖分が過剰であるという話はよく出ますが、それは加工食品についてです。じつはそれらには甘味料としてフルクトースが使われている。フルクトースの問題は、ショ糖やブドウ糖より甘く、美味しくて、しかも安いこと。だからついつい食べてしまいます。

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─―身体の機能において、フルクトースは必要ありませんか?

そう思います。必要なのは、身体のエネルギー源となるグルコースのほうです。ただフルクトースのいいところは、リバーシブル(元の状態に戻せる)なことです。それが含まれている食料品を控えれば、肥満にならず元の体型と健康状態に戻れます。

─―フルクトースは人類の進化を妨げてきたのでしょうか。

その問いに結論を出すのは時期尚早でしょう。フルクトースをたくさん含んだ食料品を使いだしたのは、ここ50〜60年ほどのことですから。

ただし、肥満がわれわれの進化に何がしかの影響を及ぼすことはかなり明白です。まずいえるのは、かつてと比べて肥満の人が増えていること。2つ目は、肥満は寿命を縮め、生殖能力を衰えさせることです。健康に対する注意を怠ると進化に影響を及ぼすことは、疑う余地がありません。

大野 和基 国際ジャーナリスト

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おおの・かずもと / Kazumoto Ohno

1955年、兵庫県生まれ。1955年生まれ。東京外国語大学卒業。米ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。生殖医療や、国際的な知識人への取材を行う。編著書に『未来を読む』『知の最先端』(以上、PHP新書)、『英語の品格』(ロッシェル・カップ氏との共著、インターナショナル新書)、『私の半分はどこから来たのか』(朝日新聞出版)、訳書に『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書)、『コロナ後の世界』(筑摩書房)『5000日後の世界』(PHP研究所)、など多数。

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