「ニュー菅」へ変身し危機克服する確率は五分五分

「ニュー菅」へ変身し危機克服する確率は五分五分

塩田潮

 知略家の仙谷官房長官が7月26日、「重要法案の政策協議で部分連合や大連合も」と発言した。
 衆参ねじれとなったが、今回は与党だけでは衆議院で3分の2に届かず、参議院否決法案の再可決が困難だ。この状態は、政界再編がなければ、向こう6年間、変わらないだろう。参院選で民主44、自民51だったから、過半数確保には3年後に民主78、自民71が必要だが、ともに不可能に近い。
 仮に次期総選挙で自民党が政権を奪還しても、逆のねじれが続きそうだ。であれば、不安定政治と政権迷走が長期化し、「ダメ政治が日本低迷の元凶」という声に乗って、「民主・自民の救国大連立」構想が浮上する可能性がある。

 だが、大連立は「民主主義の自殺」と背中合わせだ。国民から政権や政策の選択の機会を奪う。政治不信が高まり、民主主義への失望から、選挙での投票率の大幅低下を招きかねない。次に襲うのは、諸外国や日本の過去の例から見て「暗黒政治」の危険性が高い。

 菅内閣は「暗黒」の危険と深刻さを正確に認識して対処すべきだが、もともと首相は下り坂で追い込まれての防戦は不得意である。首相の十八番は、攻撃力と突破力と上昇意欲を武器に、上り坂を駆け上がることだった。
 ところが、これからは党の団結と結束に腐心しながら、大連立に走らず、パズルのような他党との連携ゲームを乗り切るという綱渡りが避けられない。成功するには、党内外の人たちに対して、膝を折り、腰をかがめて、忍耐強く働きかけていかなければならない。聞く耳、複眼思考、懐の深さ、我慢強さ、無私の心、潔さなどが要求されるが、「イラ菅」「バル菅」からの脱皮が必須条件となる。

 とはいえ、無名時代の「ゼロからのスタート」や昔の代表時の失敗や挫折を思い起こせば、自信家の首相も「重心の低さ」の大切さを案外早く認識するかもしれない。その結果、「ニュー菅」への変身を果たせば、危機克服も不可能ではないが、確率は五分五分か。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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