「在宅組と出社組」ボーナスに差ついた会社の事情 人事評価制度の運用で失敗してしまったケース
田中の仕事ぶりをきちんと把握できていなかった佐藤は、田中にあたりさわりのない標準「B」評価としていたのに対して、最高ランクの山田は「SS」評価。この差が5万円以上の差をもたらしたのです。
これを知らされた田中は、自身のコスト改善や業務プロセスの効率化などの実績をなぜ評価してくれなかったのか、上司の佐藤に問いただしました。ところが、佐藤からは「在宅だったため把握できていなかった。申しわけないが、次の評価に反映することにしよう」という返答。賞与の評価がくつがえることはありませんでした。
会社の考え方と上司の対応に失望した田中は、きちんと自分の仕事ぶりを見て正当な評価をしてくれ、成長を託すことができる会社を求めて転職活動を開始しました。
人手不足の折、ほどなくして内定が出て、田中は会社を去っていきました。ほかにも同社では、在宅勤務中の社員4人から辞表が提出されたのでした。
評価制度を運用する3つのポイント
新型コロナウィルスの影響が長引く中、働き方の常識や仕事に対する価値観が変わってきています。こうした変化に、人事評価制度の運用で失敗し、優秀な人材を失うといったケースがあります。
ご紹介した事例もその1つです。この経緯だけを見ると、在宅勤務へ働く形態が変化したために起こったトラブルだと判断しがちですが、人事評価制度を本来あるべき姿で運用しておけば、防ぐことができたトラブルだといえます。
ここを押さえて人事評価制度を運用すれば、さまざまな環境変化にも対応することが可能です。大きな改革のプロセスが必要なものではありませんので、大きなトラブルに発展する前に、対処しておくことをお勧めします。
ポイントは3つあります。「評価の目的」と「成長目標の設定」、そして「成長支援の継続」です。どういうことか、ご説明しましょう。
まず「評価の目的」についてです。人事評価制度がある会社では、評価は継続的に行われていると思います。つまり、半期、四半期、あるいは賞与と昇給前の時期に評価を実施するなど、決められた一定期間を対象に社員を評価し、これが繰り返されているのではないでしょうか。
しかし、こうした一般的な企業では評価の目的が、「賞与や昇給額の根拠とするため」といった位置づけになりがちです。
一方、人材育成を目的として評価制度を運用すると、評価に連続性が出てきます。社員が成長したかどうかは、評価結果が良くなったかどうかということですから、その推移を追っていかなければ確認できないからです。
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