「中学受験に没頭する親」が間違う大切な優先順位 子どもの感情や発達段階を無視していないか
無事受験を終えて中1になった後も、また相談が増えるタイミングです。今まで親が子どものマネジメントを中心になってやってきたけれども、中1になるとそれが変化します。「受験が終わった反動でゲームやスマホにはまりまくってどうしようもない……、学校の勉強がおろそかに……」というような悩みが、受験の延長線上にあるのも感じています。
個別にお話を伺っていると本当に様々な悩みがありますが、感じるのは、親目線ですべてを進めようとする傾向が強いということです。子どもは、それをどう感じているのかという、子ども視点が抜けているなと違和感を覚えることがあります。
今は、社会の変化が早く、時代の変わり目であるがゆえに、親に不安が募りやすい状況だと思います。それが親のレンズを曇らせているのかもしれません。親の中に、今のうちになんとかしなければとか、こうでなければ、というイメージができあがってしまうと、子どもを何とかその枠の中に入れなければ……と考えてしまいます。そこから焦りが生まれているように思います。
私が、個別にご相談を受けるケースでは教育虐待ほどには至らなくても、その1歩、2歩手前の予備軍のような状態の方もいらっしゃいます。そういう方々には個別にお話をしていき、状況を変えていくということをさせていただいています。
10代の頃の傷を未だに抱える、ある医師の話
過去に、印象的なメールを頂いたこともありました。
差出人のお父さまは中学生と小学生の2人のお子さんがいる40代の医師ということでした。親族が皆、医師の家庭に生まれ、自身も10歳のころから中学受験の勉強をしたそうです。ずっと、ひたすら詰め込み式の勉強をして、その後、中高一貫の学校にいったと書かれていました。そして1年浪人して、色々詰め込んだ結果、なんとか医師にはなることができました、ということでした。
その後、メールには「自分では大きな目標を見いだせず、人生に対して満足感が全くありません」「根底に幼少期より常に医者になるという目標だけが先行しており、それが達成された後に全く何もできなくなったと認識しています」と書かれていました。
さらに、私にとって衝撃だったのは、メールの最後の部分でした。
「自分の子どもには興味を持ったことをやり、自分の意思で小さい成功体験ができるように中学受験はさせていません。私のような人間を、今後作らないためにも、適切な中学受験のありかた、親子の関係性などについて今後も発信をお願いします。過ぎ去った10代の頃の傷は深く、いまだ癒やされることはありません。私は不惑の40歳を迎えた今でも、自分の親と取引をしてきた、そして今もそうしているような感じが常にして、親を信用できないまますごしています」
もちろん、この話は医師だから皆そうだということでは全くありません。あくまでもこの方の、個人的な体験かと思います。
一方、世の中には、何十年経っても、こういった苦しみを抱えていらっしゃる方もいる。このお父さまは、ご自身の経験から、自分の子どもにはそうしない決断をしたとのことで、次に継承されることはないでしょう。ただ、こういう極端な例も時にはあるということです。
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