年金大改正!「何歳」でもらえば最もおトクか? 老後30年間で7200万円もの額を無視できない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ほかには65歳の会社員が対象の「在職定時改定」にも注意しよう。

現在、厚生年金は長く加入するほど年金が増えるが、65歳以降に働く期間の年金を再計算していない。退職して1カ月過ぎるか、70歳になった時点で、まとめて再計算して上乗せする仕組みだ。要は保険料が毎月天引きされているものの、年金額は据え置きという状態になっている。

これが2022年4月以降、毎年1回再計算して上積みする、在職定時改定という仕組みに変わる。在職中でも年金の改定が行われ、額が年々増えていくことになる。厚生年金の増額のタイミングが早まることで家計に余裕が生まれ、国民年金を繰り下げる選択肢が生まれるかもしれない。

改定によっていついくら増えるのかは条件が少々複雑だ。毎年9月1日時点で厚生年金に加入していれば、前年9月からその年の8月までの増加分を計算し、10月分(12月支給)から増額が始まる。2022年4月の改正時に65歳を過ぎている場合は、それまでの上積みはまとめて行われる。例えば、改正時で68歳になる人は、「65歳以降の増額3年分」と「68歳の4~8月まで5カ月分」が、2023年10月分から上乗せになる。

1年分の増額をざっくり計算するには、年収に0.55%をかけてみよう。年収が約240万円(標準報酬月額20万円)なら、1年間働くと約1万3000円。年収360万円(同30万円)で1年働けば、約2万円が年金に上乗せされると考えるとよい。少ない金額に思えるが、この増額は生涯続くため、メリットはある。

月20万円で20年間なら、給付は4800万円にも

2022年に行われる改正にはほかにも「アルバイト・パートに対する厚生年金の適用範囲の拡大」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)加入条件の要件緩和」などがある。

「一般論はもういいので、私の老後のお金『答え』をください!」(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

これらの改正はどれも長くなった高齢期に対応するためのものである。

公的年金はなかなかメリットを感じにくい。働いている間は保険料が天引きされ、いざ受給するときも生活費で日々費やされるから、実感する機会が少ない。が、仮に世帯の年金が月20万円とすれば、20年間で4800万円、30年間で7200万円の給付を受けることになる。決して少なくない金額だ。

もし年金制度がなければ、自前で用意しなくてはならない。準備できなかった場合、75歳以降の後期高齢者になっても働き続けるか、貧困に近い生活で我慢することになる。確かに保険料の負担は軽くないが、老後を支える大事な仕組みだ。繰り下げ受給など、できるだけ年金を増やしておくと、人生の保険として役立つのは間違いない。

『週刊東洋経済』12月11日号(12月6日発売)の特集はです。
井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事