1年で7割高、コショウ価格上昇のワケ 2000年代後半から上昇トレンド定着

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一方、生産はあまり増えていない。全世界の生産量は年30万トンで、産出国トップは年15万トンを担うベトナム。その歴史は意外に浅く、2000年以降にコショウの生産を増やしている。だが、「インドやマレーシアなど歴史的な生産国が、より効率よく儲かる天然ゴムやスズへの転業を進めている」(輸入商社)。新興国の消費拡大と産業高度化の両面がコショウの価格を押し上げ続ける構造だ。

加えて、2009年以降の世界的な金融緩和も価格を上昇させた要因。市場が小規模なので価格が操作しやすく、格好の投機対象になっている。

今年は天候不順も効いている。インドやインドネシア、マレーシアで長雨が続き不作。「インドは国内消費も多いため価格が急騰し、これが国際市況全体を牽引した面がある」(輸入商社)という。

じわり食卓に影響も

さて、食卓への影響はどうか。輸入原料のため、メーカーにとっては円安も打撃だ。家庭用のテーブルコショウは、中身よりも容器代や燃料費のほうが製品に占めるウエートが高いので、今のところ値上げに至っていない。

しかし、業務用はすでに値上げが始まった。在庫を持たず、注文に応じて提供するオーダーメードなので、調達価格はすでに高く、「これまでの販売価格ではまったくやっていけない」(大手スパイスメーカーの調達担当者)ためだ。

「食品加工向けは、これまで政策的に安く提供してきた得意先に、やむなく、昨年から値上げさせていただいた。レストランやホテルなどの外食向けも現在、値上げを検討している。各社とも同様の動きと聞いている」(同)

天候は一時的な要因としても、新興国の成長という価格が上昇しやすい構造がある。コショウは今後とも家計の負担増の一部となりそうだ。

「週刊東洋経済」2014年9月13日号<9月8日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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