アップルウォッチが持つ意外と深い広がりの意味 目論むのは生活サービス全体のエコシステム覇権
つまり、数々のイノベーションを成し遂げたジョブズが、最後に夢想したのは、次世代ヘルスケアサービスの青写真だったのではないでしょうか。残念ながらジョブズはアップルウォッチの開発に関わることなく亡くなりました。しかし創業者の思い、フィロソフィーが今なお色濃いのがアップルです。ティム・クックはジョブズの遺志をつぎヘルスケア事業に進出した。そう考えるのはごく自然であるように思います。
ヘルスケア産業に参入するアップルがもたらすインパクトは、どれほどになるか。それは、ディスラプト(破壊)のひと言がふさわしいものです。かつてアップルは、製品をめぐる戦いではなく、プラットフォームをめぐる戦い、生活サービス全般のエコシステムをめぐる戦いを仕掛けることで、音楽産業を破壊し、携帯電話産業を破壊しました。同じことが、次はヘルスケア産業で起こりつつあります。
「ものづくり企業」アップルはサービス重視へと舵を切った
そもそもアップルとは、本質的には「ものづくり」の企業です。iPhone、iPad、Macなど、高いデザイン性を誇る製品群こそアップルの代名詞。2020年度(2019年10月~2020年9月)の売上高における比率を見ても、iPhoneが50.2%でトップ、そしてMacが10.4%、iPadが8.6%と続きます。
ただし、アップルは「端末を販売して終わり」の企業ではありません。例えば、iOSを搭載するiPhoneやiPadのアプリ・ダウンロードサービス「App Store」。これは世界中のアプリ開発者がアプリを提供・販売するためのプラットフォームです。アプリ開発者は、App Storeを通じて得た販売額の3割を手数料としてアップルに支払います。アップルは「端末を売って終わり」のメーカーとは違い、ソフトやサービスの会社でもあるのです。
そして今、アップルの売上高に占めるサービス部門の割合は、拡大を続けています。2014年度(2013年10月~2014年9月)では、iPhone、iPad、Macら主力製品の売り上げが全売上高の9割以上を占め、App Storeや音楽配信サービスのiTunes Storeなどのサービス事業は1割ほどでした。それが2020年度にはサービス事業の占める割合が2割近く(19.6%)にまで上昇。サービスのラインナップも増え、App Store、iTunes Storeのほか、「Apple Pay」「Apple Music」「Apple TV」などが加わりました。
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