「日経平均3万円の再回復」が難しくなってきた 短期的には「売られすぎ」だが反発力は弱い?

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ただ、熊(株価下落要因)が早めに現れ、それによって株価下落基調がすでに始まっているという面もあると考える。どうやら、6つの熊のうち、1番目と3番目の熊の登場がどうも早いようだ。

2つの「供給サイドの問題」が深刻に

1番目の熊とは、アメリカでのテーパリング(量的緩和縮小)が、大幅な金融緩和を前提としてきた企業や投資家の行動を逆回転させる、というものだ。

テーパリングそのものは、11月2~3日のFOMC(連邦公開市場委員会)で決定し、開始されている。だがジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、11月30日の議会上院での証言で「資産購入を数カ月早く終了することを検討するのが適切だ」と語り、次回のFOMC(12月14~15日)でテーパリング加速を議論する意向を示した。

加速の背景として、議長は「より持続的なインフレのリスクが高まっている」ことを挙げた。加えて「インフレに関して見落としていたのは供給サイドの問題の予測の難しさだ」とも指摘している。

供給サイドの問題として注目されているものは、主として2つある。1つはアメリカで景気回復に伴う求人が急増しているが、労働者が集まらないという、人手不足の問題だ。

労働市場に復帰しない人が多いという背景には、コロナ感染を恐れて、通勤時や勤務時の感染リスクを避けたいため、リモートワーク中心の仕事への転職を考えているものの、なかなか希望に見合った仕事が見つからない、などの要因が挙げられている。

人手不足のため賃金が上昇して、それが物価を押し上げるという懸念があるうえ、物流(トラックの運転や港湾の荷揚げなど)面では小売り段階での物不足を引き起こすという不安も強い。

もう1つは、欧州諸国などが「脱炭素」と声高に叫び続けるため、原油などのエネルギー生産業者が将来を悲観視して、開発投資を抑制し、リグ(油井の掘削装置)の稼働も大きく増やさないため、エネルギー供給が通常より抑えられてしまっているという現象だ。

ただ、そうしたインフレにFRBが対応するといっても、労働者を増やすことも原油や天然ガスを生産することもできない。FRBができることは、金融緩和縮小により景気を抑制し、需要を減退させて、物価を抑えることだけだ。これは経済や株価にとって好ましくはない。

また、前回のコラムで、金融緩和を前提とした投資家の行動が逆回転する例として、「リスクの高い社債の購入も手控えられる」だろうし、「アメリカの企業は社債などで借り入れた資金を自己株買いに充ててきたため、やはり株価を圧迫する」とも書いた。

実際、11月末にジャンク債(格付けがBBプラス以下の債券)の価格指数が急落した、との報道も目にする。アメリカの金融市場のきしみが始まっているようだ。

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