「日経平均3万円の再回復」が難しくなってきた 短期的には「売られすぎ」だが反発力は弱い?
さてもう1つ、3番目の熊として挙げたのは「中国に関する多数のリスク」だ。そのなかでは、「『共同富裕』を掲げての突然の産業規制が、世界の投資家の中国からの資金逃避を増加させる」と指摘した。
庶民の「儲けすぎ」との怨嗟はIT起業家などに向かっていたため、中国政府はアリババグループに対し、同グループ傘下のアントグループの上場を中止させるなどの規制を強めていた。こうした中国政府の姿勢が、同国IT企業がアメリカで新規上場することを禁止する、あるいは上場を廃止させる、との思惑を呼んでいた。
加えて、米中間の対立が深刻化する中、アメリカのSEC(証券取引委員会)が12月2日、同国に上場する外国企業向けの新規制を公表した。これにより、中国企業が当局の検査に応じない場合、上場廃止になる可能性が生じた。そこへ3日に、滴滴出行(ディディ)がアメリカでの上場を廃止すると決定したため、中国銘柄の株価が総崩れした。
「儲けすぎ」との中国庶民の不満は、不動産業にも向かっている。すでに中国恒大集団の資金繰りの苦境は騒がれ始めて日が経つが、4日の報道では「当局の指導と監督の下で、同社が外貨建て債務の再編交渉に入る」と伝えられている。
「国内優先」の身勝手な姿勢が中国からの資金逃避に
ここでいう債権保有者は中国以外の投資家などだと推察され、当局が事態収拾に向けて一歩踏み込んだとも考えられるが、要は「外国向けの債務の利払いや元本返済を一部踏み倒して、国内の債権者を守ろう」といった虫のよい話だ。このため、海外の債権者は不満を唱えているもようだ。ますます「世界の投資家の中国からの資金逃避」が膨れ上がるだろう。
こうした動きは、中国株や中国企業の社債、さらにはそれらを組み入れているファンドなどへの投資家に打撃を与え、他国市場にもその悪影響が現れうる。
英国のフィナンシャル・タイムズ紙の4日付けの記事 “Stonk market update” (英語で stonk という言葉は本来存在せず、株式(stock)について皮肉めいた意図がある際に使われる)では、一時は米中のIT関連企業などに積極的に投資して時代の寵児になった、アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏の写真を、わざと逆さまに掲げている。そのこと自体は悪趣味だと感じるが、これも1つの潮目の変化を示しているのかもしれない。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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