「GAFA+X」が名門大学と組んで起こす世界の変化 コロナ後において若い世代に託される期待

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「四騎士+X」の勢いが衰えることはないということは、われわれが無意識のうちに感じていることでもある。しかし、起業家であると同時に、ニューヨーク大学スターン経営大学院教授という肩書の持ち主でもあるギャロウェイ氏にそのことを改めて強調されると、「まぁ、そうだろうな……」と複雑な気持ちにならざるをえない。

しかし、そうであるからこそ本書を通じ、「いま起こっていること」と「これから起こるであろうこと」を理解しておく必要があるともいえるのではないだろうか。

エリート大学はブランドの一種

個人的に最も強い説得力を感じたのは、ディスラプターズにとっての“最大の獲物”として、ギャロウェイ氏が大学を挙げている点だ。新型コロナウイルスの影響で、どの業界よりも崩壊に近づいているのが高等教育産業だというのである。

はっきりさせておくが、大学はれっきとしたビジネスである。パンデミックが始まる前から、この7000億ドル規模の業界は崩壊寸前だった。何十年も前から、高等教育はどんどん危険に向かっていた。新型コロナは初めての「本物の危機」になるだろう。(201ページより)

大学の授業料は上昇の一途をたどるばかりだが(ギャロウェイ氏によれば、過去40年で1400%上昇しているそうだ)、そんな高等教育産業が提供しているものは旧態依然としたものばかり。つまり学生やその家族の負担が大きくなる一方、教育サービスの質は向上していないわけである。

にもかかわらず価格を引き上げることができたのは、少数のエリート大学が「希少性」を最大限利用してきたから。いいかえればエリート大学を、公益のための存在ではなく、ぜいたく品ブランドの一種だと認知させてきたということだ。

何百という私立のリベラルアーツ大学は、ハーバード大学に似せた美しいキャンパスを模すことで、エリート(そして入学を拒絶された90%の世帯)の教育費を値上げしてきた。その結果、何百万人もの中産階級の家族はベンツの価格で韓国製のヒュンダイ車を買わざるをえなくなった。
その授業料の大半は簡単に申し込める借金で賄われている。いまや聖典の言葉
──どれだけの犠牲を払おうと、汝の子を大学にやらねば、親として罪を犯すことになる──となったアメリカ人独特の信条に巧みにつけ込む形で。(205〜206ページより)
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