「GAFA+X」が名門大学と組んで起こす世界の変化 コロナ後において若い世代に託される期待

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とはいってもこれは一例であり、ギャロウェイ氏は決してビッグテックのあり方そのものを肯定しているわけではない。事実、ビッグテックは“過剰な豊富さ”という、種にとっての新たな脅威を生み出しているとも主張している。

「若い世代」という希望

だからこそ次世代の人々には、いまよりも頭がよく、俊敏で、強健になってほしいのだという。ものごとが脱線してしまうのは、私たちの本能がついていけないほど速くイノベーションが進んでいるためなのだから。

『GAFA next stage ガーファ・ネクストステージ:四騎士+Xの次なる支配戦略』(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

これから「四騎士+X」がもたらすものが明らかにされている以上、本書は必ずしも明るい内容だとは断言できない。しかしそれでも最終的に希望を感じさせてくれるのは、若い世代への期待で話が終わるからだ。

いま目の前にあるパンデミックをはじめ、戦争、不景気など、ショックには苦痛がともなうものだ。だが人間の歴史を振り返ってみれば、“その後の時代”は、とくに生産力が高まることが多いというのである。痛みに耐えて対処してきた世代は、誰よりも戦う用意ができているわけで、つまりは現在の若い世代がそれにあたるわけだ。

これからの若い世代が、ポスト・コロナの世界の重荷をどうやって背負うのかに関しては、希望を持てる理由があるそうだ。

いま人類という種の大いなる能力──協力──を大事にする世代が育っているのではないか。80年前にはイギリス人とロシア人とアメリカ人が、共通の敵と戦うために同盟を組んだ。なら、いま地球上の77億人を脅かしている敵を根絶するために、世界が協力できないわけがないだろう。(317ページより)

80年前の話は日本人にとっては適切でない気もするが、ともあれ注目すべきは“協力”の大切さだ。本書ではそれが最終的に「アメリカ人としての意識」に集約されるのだが、同じことは人種を超えて、すべての人間にもあてはまることではないかと感じるのである。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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