財政膨張の原因の一部は財務省の「管理政策」だ 財政再建派の筆者が指摘したい補正予算の問題

✎ 1〜 ✎ 63 ✎ 64 ✎ 65 ✎ 最新
拡大
縮小

いずれにせよ、国債の一種である財投債の当初発行予定額は45兆円とされていたのだが、今回の補正予算の段階で15兆円に減額されたのである。要するに、一般会計では財政赤字が膨らんだのだが、財政投融資特別会計では不要分が生じた。かつ、一般会計の赤字増より財政投融資の不要分のほうが大きかったのである。

財投債の45兆円は主に2021年度当初予算で計上された財政投融資(40.9兆円)の財源だったのだが、このうちの大半が不要となったようである。おそらく、財政投融資のうち約25.2兆円を占めた「資金繰り支援や資本性劣後ローンの供給等(日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫)」などの中小企業向けのセーフティーネット強化策に対し、実際にはそこまで需要がなかったのであろう。

結果的に、財務省は国債(財投債)を必要以上に発行する計画を立て、その多くを実際に発行してきたという構図になった。必要のない国債発行計画を作成したことは、財政再建にはまったく反する行動といってよい。

巨額補正予算の繰り返しで財政規律は弛緩

むろん、セーフティーネットの強化策には大きめの予算を確保しておく必要があり、多少の不要分が生じることは避けられない。また、コロナ禍が深刻化して資金繰り支援が実際に必要となっていた可能性はゼロではない。しかし、その場合にはその時点で補正予算を編成して予算を拡充すれば済む話でもある。やはり、これだけ巨額な不要分が生じたことに対し、事前に予想することはできなかったのか、という疑問が残る(予想できなかったという回答が返ってきそうだが)。

そして、結果的に多めに発行してしまった(含む発行予定分)財投債の不要分が、「巨額補正予算」の財源になったことに鑑みれば、財務省は「バラマキを含む巨額補正予算を予想して事前に財源を確保しておいたのではないか」という疑いも出てくる。これが、指摘したい問題の本質である。

財務省は、当初予算が拡大することには神経質に対応する一方、「短期間で編成する補正予算は、当初予算と比べて厳格な査定が難しく、効果に疑問符が付く事業が紛れ込む『抜け道』になりやすい」(時事通信)という指摘もある。今回は財投債の不要分が、政府が求める「抜け道」に対応するための「バッファー」(隠し財源)として勘案されていた面があるのではないか。

次ページ財務省の組織自体が政治への対応を重視
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT