財政膨張の原因の一部は財務省の「管理政策」だ 財政再建派の筆者が指摘したい補正予算の問題

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1つ目の論点は、前述した「二項対立」の話と通じるところがある。「財務省は財政再建派である」がゆえに、非財務省の人間が財政再建の必要性を訴えると、「財務省派」とレッテルを貼られることが少なくない。だが、「逆」は必ずしも真ではない。

筆者は、どちらかといえば、財政健全化派だが、本コラムでは財務省の「管理政策」に疑問を呈するつもりである。財政政策の是非とその実行のための財務省による対応策の是非とは分けて考えるべきで、今回、筆者が問題にするのは後者である。

2つ目のポイントは、財務省において、政策の方向性である財政再建とは矛盾する面がある不透明な管理政策は是正されるべきであるという点だ。中空氏の「無駄を省く」という指摘とも重なるところがあるだろう。以下で具体的に指摘したい。

財務事務次官による批判論文は逆効果

政府は11月26日、2021年度補正予算案を閣議決定した。経済対策の関係経費31.6兆円を盛り込み、歳出総額は36.0兆円となった。財政赤字は22.1兆円増える。12月6日召集の臨時国会に提出され、年内成立が見込まれる。

今回の予算編成においては、矢野事務次官が「バラマキ合戦のようだ」と批判したことが注目されたが、「矢野論文は自民党内の積極財政派を刺激し、かえって財政拡大圧力を生む結果となった」(与党幹部)との指摘があると、毎日新聞(11月27日付)が報じている。安倍元首相が他の月刊誌で矢野氏の論文の内容を否定していたこともあり、安倍氏による矢野氏への反発が積極財政派を勢いづかせたようだ。

その結果、与党内では「10月中には真水で30兆円超という規模感が共通認識になっていた」(自民党幹部)という。また、与党内では「参院選まで財政再建という言葉は封印だ」(自民党政調幹部)という声まで上がっている模様だ(前出・毎日)。

一方、霞が関にはこうした政治の空気を変えようという動きはなく、「官僚の仕事は、政治が決めたことを実現すること。バラマキは問題だが、国民が選挙で選んだ以上、我々に政治の決定に対抗する手段はない」(ある省庁の官僚)との声や「昔と違い、いまは『財源がない』と言っても言い訳にならない。『だったら国債を出せばいい』となってしまう」(財務省幹部)との声があるという(前出・毎日)。

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