職場の飲み会「不要6割」をあおる風潮に疑問な訳 納得させられる一方で分断に乗っかっていないか

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今回のアンケートで重要なのは、「職場でのコミュニケーション」の中で「飲み会」だけを切り取って考えないこと。もともと「飲み会」は、「職場でのコミュニケーション」ツールの1つにすぎないものです。

給料をもらって働いている以上、職場でのコミュニケーション自体を「不要」と拒否するのは、単なるわがまま。たとえば、「飲みニケーション」を拒否するなら、その分だけ別の機会でコミュニケーションを取って、仕事のパフォーマンスを上げていくべきでしょう。

その点、今回のアンケート回答で気になったのは、「飲みニケーション」の問題ではなく、「職場の人間関係がよくない」「距離が縮まらないと決めつけている」人の多さ。お酒や飲み会が苦手なのは仕方ないものの、「人間関係をよくしていきたい」「少しでも距離が縮まるといいな」という気持ちを持っている人が少なくなるほど、その部署、引いては会社全体の業績も上がりづらくなっていきます。

さらに少し見方を変えると、「必要・どちらかといえば必要」という人が減ったのは、「仕事へのモチベーションが高い人が減ったから」なのかもしれません。ネットが発達したとはいえ、まだまだビジネスシーンではリアルな出会いやコミュニケーションが重要であることも事実。「成長したい」「出世したい」「給料を上げたい」「コネを作りたい」「いつか独立したい」などのモチベーションを持つ人が少なくなっているとしたら気がかりです。

コロナ前から不要派は増えていた

情報番組を見ていた中で「核心をついている」と感じさせたのが、「ひるおび!」コメンテーターの朝日奈央さん。朝日さんは「今までの風潮的に『飲みニケーションが当たり前』みたいなのがあったと思うので、こういうコロナ禍になったからこそ『声に出す時がやっと来たか』みたいな感じなのかなと思います」とコメントしていました。

さかのぼること2年前の2019年12月、「#忘年会スルー」というハッシュタグがツイッター上に飛び交うなど、コロナ禍の前から、職場の飲み会に参加しない人が増えはじめていました。さらにその数カ月後にコロナ禍がはじまったことで、「職場の飲み会なんてやっている場合ではない」「もともと不要なものだった」などのネガティブな声が次々に飛び出しやすい状況になったのです。つまり、きざしが現れはじめていたところに、コロナ禍が訪れ、それが決定打になったのでしょう。

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