職場の飲み会「不要6割」をあおる風潮に疑問な訳 納得させられる一方で分断に乗っかっていないか

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また、もう1つ見逃せないのが、アルハラ(アルコール・ハラスメント)の存在。コロナ禍の前から、パワハラ(パワー・ハラスメント)、セクハラ(セクシャル・ハラスメント)に続いてアルハラも、それなりに浸透していました。

しかし、実際のところアルハラの解釈は、「飲酒の強要」「酔ったうえでの迷惑行為」「お酒が苦手な人を揶揄する」など、飲み会での振る舞いに留まることが多かったのです。今回のアンケート結果は、「そもそも飲み会への参加が当たり前のようなムードもアルハラに当たるのではないか」という次のステップに進んだことを意味しているのかもしれません。

近年、ネットの発達と普及によって、「自分の好きなもの、人、場所を選んで生きていく」というオンデマンド志向の人が増えました。そのオンデマンド志向は、「同僚と、決まった料理を、決められた店で食べる」という飲みニケーションには合致しづらいため、「不要」と答える人が増えたのは当然と感じる人も多いのではないでしょうか。

「勤労感謝の日」アンケートだった

最後に、このアンケート自体に疑問を抱いた最大の理由を挙げましょう。

それはテレビやネットメディアの切り取り方が偏っていたこと。もともとこのアンケートは日本生命の「勤労感謝の日」に関するアンケート調査であり、決して「飲みニケーション」がメインのものではありません。

そのアンケートには、「時間外労働時間は増えましたか?減りましたか?」「仕事・会社で何に対してストレスを感じていますか?」「テレワークが導入されてよかったと思いますか?」「コロナ禍が終わってもテレワークを継続したいですか?」「副業をしていますか?」「勤労感謝の日にプレゼントを贈ったこと・もらったことがありますか?」など19の質問があり、飲みニケーションはごく一部にすぎないのです。

しかし、冒頭に挙げたように、多くのメディアが飲みニケーションだけをピックアップしました。その理由は、「注目を集めて議論が盛り上がりそう」「数字につながりそう」だからでしょう。世間に問いかけて議論につなげることは問題ありませんが、“飲みニケーション”という微妙なフレーズをわざわざ使ったところから、「『必要派』と『不要派』、『酒好き』と『酒嫌い』を分断する形のほうが盛り上がる」というニュアンスを感じてしまうのです。

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