「きのう何食べた?」万人から愛される納得の理由 最大の魅力は2人の愛が「加点方式」なこと

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また、中年期ということは親が老年期。テレビドラマは基本的に若い人が主軸になるため、親も子もまだまだ現役、「老い」に直面していない。

シロさんとケンジは親の老いを目の当たりにすることで、ふたりの絆を強固にしていく。連ドラ・スペシャルドラマ・劇場版で共通して登場するのが、シロさんの両親だ。頭の固い父を田山涼成(ドラマ版の前半は故・志賀廣太郎)、料理上手で古風な母を梶芽衣子が演じている。

息子がゲイと知っても父はまったく理解できず、家では女装をしていると思っている。母は母で、息子を知ろうと努力はするものの本当の意味でゲイを理解していない。正直、厄介な両親ではある。

ついにケンジの母も登場

シロさんが正月にケンジを初めて実家に連れて行き、両親も受けいれたと思わせたのがドラマ版の最終回。スペシャルドラマでは父が頭を下げて、シロさんに仕送りを依頼してくる。

劇場版ではこの両親のせいでケンジがひどく傷つくハメに。さらに、ケンジの母(鷲尾真知子)も登場。実家である美容院を継ぐ話をもちかけてくる。夫が女をつくって家を出て、時々帰宅しては暴力をふるって金を奪っていく。それでも離婚しないで三人の子を育て上げた、たくましい母が引退を宣言。

ちなみに父は千葉で生活保護を受けているため、毎年ケンジのもとには役所から扶養届書が届く。扶養も断り、会うこともないが、その封書は父の唯一の生存確認だ。

確実に家族は老い支度を始めている。シロさんとケンジはそれぞれの親の病や衰え、老いを目の当たりにし、経済的な援助や家業の継承という話も浮上。ふたりは自分たちにできることだけをする。

結婚するとか、孫の顔を見せるとか、金を出すとか、家業を継ぐとか、自宅で介護するとか、親が望むことをかなえるのがはたして親孝行だろうか? その答えをふたりが出してくれた気がする。親が思うほど不憫でも不幸でもなく、むしろささやかな日常を最高の幸せと感じている。それこそが本当の親孝行ではないか、と。

ゲイカップルの日常を描いたら、人類共通の救いがあって一体感が生まれた。結婚していなくても、子供がいなくても、裕福でなくても、毎日おいしいご飯を食べて小さな幸せを噛みしめる。万人に愛される本当の理由はそこにあるのではないかしら。少なくとも私は救われた気がするよ。

吉田 潮 コラムニスト・イラストレーター

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よしだ うしお / Ushio Yoshida

1972年生まれ。おひつじ座のB型。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News it!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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