「きのう何食べた?」万人から愛される納得の理由 最大の魅力は2人の愛が「加点方式」なこと
2019年にテレ東が連ドラで放送、翌年の正月にはスペシャルドラマも制作。さらに映画化され、現在「劇場版」が上映中。シロさんこと筧史朗を演じるのは西島秀俊、ケンジこと矢吹賢二を演じるのは内野聖陽。このゲイカップルは、原作漫画ファンも納得のキャスティングだ。そもそも原作漫画が秀逸であることに加え、制作陣の原作に対する思い入れも相当強く、万人から愛される作品となったわけだが、この魅力をざっくりまとめてみよう。
加点方式の愛と、文字通りの日常茶飯事
まず、最大の長所は、このふたりの愛が「加点方式」であるところだ。恋をして愛を育んで、ともに暮らしていくと、どうしても「減点方式」になってしまうのが定石。相手のイヤなところばかり目について、減点を重ねる。愛情は目減りしていき、最後に残るは惰性と妥協と諦観。そんなカップルがほとんどよ、世の中は。
ところがシロさんとケンジは、お互いの長所をどんどん見つけていくし、自分の悪いところは極力直していく。
連ドラでは、ふたりのスタンスの違い、心が擦り減るような偏見をもつ家族との距離、同棲の経緯や互いの過去なども丁寧に描かれた。スペシャルドラマではその延長線上の愛情確認、劇場版では四季の美しい風景(紅葉や桜)とともに、ふたりが成熟して絆をより深めていく様を描いている。
西島&内野の愛情表現も、時間経過とともにどんどん高まっている気がする。「イヤ、もう、マジで好きでしょ、あんたたち」と思わせるふたりの空気。連ドラの初めの頃と比べても、お互いの敬意と愛おしさが増し増しになっている感がある。ふたりの長期的な計画による演技プランだとすればすごいし、演技を超えた好意がこんなに漏れ出てくるのは稀有。劇場版ではふたりの「表情の柔らかさが醸し出す心情変化」と「経年で生じるなれあいの心地よさ」をたっぷり堪能できた。
そして2つめ。シロさん(時々ケンジ)の作る料理は気取っていなくて好感がもてる。アクをとるなどの作業は手を抜かないし、一品料理ではなく必ず何皿か作る「副菜の鬼」ではある。それでも、基本的に誰にでも作れそうなメニュー(材料も手軽に入手可能)が多い。シロさん自身も「めんつゆと顆粒だしでほぼほぼ乗り切る」と自嘲。いわば毎日作っている人の料理なのだ。
文字通り、日常茶飯事。そこがいい。聞いたこともない材料や調味料を使い、全体的にすかした料理をドヤ顔かつ上から目線で出す主人公では、この物語は成立しないもんね。
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