自由が丘も変わる「東横沿線」建設ラッシュのなぜ 大規模開発が少ないエリアに何が起きている?

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【祐天寺】複数のマンション建設が進行中

中目黒と学芸大学の間、各駅停車しか停まらない祐天寺駅周辺でも建設ラッシュが起こっている。まず目に付くのが駅からでも見えるほど、直線距離で100mほどのバス通りにあった銀行跡地でのマンション建設である。祐天寺を最寄りとするエリアでは2005年に目黒区役所跡地に2棟、323戸、2009年に14戸のマンションができて以来の新築である。それほど広い敷地ではないので、数は見込めないが、駅との近さは圧倒的だ。

昭和の街並みが残る祐天寺でも複数マンションの建設が進んでいる(筆者撮影)

その現場から数十メートルほどの場所では賃貸マンション、店舗などから成る複合ビルが建設中で、さらに道を挟んではコンパクトなオフィスビルも姿を現しつつある。こちらは完成前にほぼ入居が決まっている状態となっており、あまり知られていないものの、渋谷から3駅目という立地の強さを感じる。

さらに駅東口の目の前では駐車場が閉鎖され、おそらくは開発待ち。駅から5分ほど、駒沢通り沿いでも複数の老朽化した木造住宅を解体した空き地が出現しており、そのさらに300mほど先の、やはり駒沢通り沿いではマンションの建て替えが始まっている。

駅西口でも歩いて3分ほどのところでアパート建設が進むなど、駅から5分圏だけで数件の建設が進んでいるわけで、これを10分圏に広げるとさらに3件ほどが追加になる。

マンション建設が続いている理由は?

中目黒同様、祐天寺も細街路、古い木造住宅が多く残るエリアであり、祐天寺の借地が多いという独特の事情もある。借地の場合、相続時に土地の価値が低く見積もられるため、相続で不動産を手放さずに済むことが多く、古い建物が残りやすいのである。それが住宅の更新が少ない理由の1つだが、逆に今、これだけが同時多発的に動いているのはどういうことだろう。

2021年6月には祐天寺駅周辺地区整備計画が策定されており、駅前広場の再整備その他が計画されているが、それが建替え、新築などのきっかけになっているとは思えない。不動産関係者を中心にいろいろ聞いてみたものの、理由は不明。単に時期が重なったのではないかという答えが多かったが、一部には不動産が高値の今だからという答えも。

それは逆にいえばこの先、値が下がることを予測する向きがあるということでもある。家を探している人からすれば住みたい場所に供給があるのはうれしいことだが、その価格で将来大丈夫か。東横沿線に限らず、価格はかなり上がっている。購入には熟慮が必要だろう。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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