ワークマンの加盟店は「夫婦で経営が条件」のなぜ フランチャイズに求める、稼ぐ力より重要なこと

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私が店舗を見て回っているなかでは、職人のお客様から「あれ、来た?」と聞かれて、「来たよー!」と返している店長を見たこともある。お客様へのタメ口は禁じているが、一概にとがめるのも難しいところだ。

このお客様は駐車場から声をかけていたのに、レジ傍にいた店長は声だけで相手が誰だかわかったようだった。朝一番で「あれ、来た?」と聞かれて「来たよー!」と即答できたのは、注文を受けていた商品が届いているかの確認をいち早く済ませていたからだろう。

こうした関係が築けていたなら、お客様の側でも敬語を使われることはおそらく望まないはずだ。タメ口になっていることの是非を問わなければ、最高のサービスといえる。

一見のお客様がいた場合、「常連中心の店なのか」という疎外感を与えないように注意すべきだが、お客様の信頼を厚くして、いろいろなかたちで頼ってもらえるようになってこその“店の顔”だ。

このお客様などは注文した商品がまだ届いていないのなら、店に入らずそのまま仕事に行こうと考えていたと想像される。こうした気軽さを持ち込めるようにしているのは信頼と親しみがあってこそのことだといえる。

この店長はどのお客様からも信頼されているようで、地域でナンバーワンの売り上げを記録するようになっている。

夫婦で協力すれば2人そろって店にいる必要がない

「ご夫婦での参加」を基本にしていることにも意味はある。

『ホワイトフランチャイズ』(KADOKAWA)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

夫婦で協力していけば、2人そろって開店から閉店まで店にいる必要はなくなる。夫婦が入れ替わりで店にいるようにしている店舗は実際に多い。

そのため「保育園に子どもを迎えにいくのがどこの家よりも早くできている」といった声も聞かれている。

また、夫婦で経営していればお客様にとってもなじみやすく、「店長いる?」「今日は奥さん、いないの?」といったコミュニケーションが生まれやすい。ワークマンとして求めているのはそうした店舗運営である。

店長夫婦には店の顔になってもらう必要があるため、人任せすぎる経営はタブーになるが、店長が休んで、スタッフだけで店舗運営する時間帯や曜日があるのはまったくかまわない。むしろそうしてもらうことを本部の側では望んでいる。

どのくらいの人数のスタッフにどの程度の時間、働いてもらうかは、人件費を考えた店長の裁量にゆだねられる。

ワークマンではロイヤルティーを一定比率にしているなど、必要となるお金や分配金の仕組みはわかりやすいものにしている。フランチャイズによっては、売り上げに応じてロイヤルティーが変動する契約になっている場合も少なくない。売り上げが増えるほどロイヤルティーも高額にしていくやり方などはワークマンの考え方とは真逆のものだといえる。

土屋 哲雄 ワークマン専務

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つちや てつお / Tetsuo Tsuchiya

東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て三井物産デジタル社長に就任。本社経営企画室次長、三井情報取締役。2012年ワークマンに入社。2019年より現任。ワークマン店は作業服市場を取り尽くす勢いのため、2018年に新業態店として「WORKMAN Plus」を仕掛けて大ヒット。20年に女性目線の「#ワークマン女子」店を立ち上げ、10年で400店舗の出店をめざし快進撃中。著書に『ワークマン式「しない経営」』(ダイヤモンド社)がある。

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