経験者が激白!流行する「ギグワーク」過酷な末路 若者たちはどうしてのめり込んでしまうのか

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さらには、個人請負に対して約束した仕事を与えないばかりか、多額の違約金を請求するような会社すらある。

「コロナ禍での収入減を補うためアルバイトを探したところ、『日収2万円以上、月収40万円以上可』という求人広告に目を引かれました」

タクシー運転手の男性はそう経験を話す。勤務明けや休日にできるアルバイトで、かつ上記のような好待遇をうたっていたのが、あるバイク便会社の個人請負のバイクライダーだった。

仕事を始めてみると実態がまるで違う

だが、面接を経て仕事を始めてみると、実態はまるで違っていた。1日をその仕事にあてても、配送は1~2件程度しかなく、「ひと月で12日間、朝から晩まで働いても収入は2万円台、日収2万円どこか、月収2万円というのが現実でした」(男性)。

とても割に合わず会社に仕事を辞めると申し出ると、なんと解約には3カ月前の申告が必要で、今すぐやめるには計60万円の「違約金」を支払うよう求められた。

「労働というよりもはや搾取。個人請負を隠れ蓑にした悪質な雇用詐欺以外の何物でもありません」(男性)

こうしたギグワークで働く人からの相談を受けている労組、「プレカリアートユニオン」の清水直子委員長は、「個人請負を悪用する企業は、人に雇われるよりも、自らが事業主になったほうが安心などと、巧みにたきつける。会社に対等なビジネスパートナーなどとおだてられ、結局働く側が搾取されるだけのケースが横行している」と警鐘を鳴らす。

個人請負は政府が働き方改革で掲げる「柔軟な働き方」の1つとして喧伝される。だが、同じ業務を行う労働者よりも、はるかに多くの落とし穴が待ち受ける危険は重々用心することが欠かせない。

(2日目第2回は若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題

風間 直樹 『週刊東洋経済』編集長

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政経学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。14年8月から17年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、19年1月から調査報道部、同年10月より現職。著書に『雇用融解』(07年)、『融解連鎖』(10年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(13年)など。

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