ソフトバンクを分析する Tモバイル「買収白紙」の影響はあるのか?

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さらに「負債の部」から有利子負債を調べますと、2013年3月末は合計で3兆7078億円。2014年3月末は9兆1700億円まで膨らんでいます。

以上のことから、ソフトバンクは、A380を6機買おうとしたスカイマークほど無謀とまでは言いませんが、かなり大胆な投資をしていることがわかります。

こうした中、ソフトバンクはTモバイル買収などに向けて、現預金を1兆9634億円まで増やしていました。もちろん、その裏では借り入れを行うなどしてファイナンスをしています。リスクを高めながら、買収に備えていたのです。

この状況で、もし、Tモバイルの買収に成功していたら、長期的には戦略上の優位さを出せたかもしれませんが、短期的には買収資金がさらに必要となり、財務内容が悪化する可能性がありました。財務内容が悪化したときに大きな環境変化があれば、一気に危機になることもありますから、Tモバイルの買収を断念したことは、当面の安全性を保つという点ではよかったと言えるでしょう。

安全性は保たれたが、スプリントの問題が残る

問題は、買収が白紙になった今、スプリントの収益力をいかにして上げていくか、という点です。

携帯電話事業というのは、巨額の設備投資を要する業種です。キャッシュフロー計算書から「投資活動によるキャッシュフロー」(同35ページ)を見ますと、設備投資にあたる「有形固定資産及び無形資産の取得による支出」がマイナス1兆3714億円計上されています。装置産業ですから、事業を維持するだけでも年間1兆円を超える投資が必要なのです。

さらに、ソフトバンクは昨年スプリントを買収しましたから、「子会社の支配獲得による収支」として、1兆6635億円を使っています。

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