「家賃はもったいない」と言えるこれだけの理由 そもそも不動産は格好の「徴税対象」と理解せよ

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別の角度から計算もしてみよう。都心の新築マンションの表面利回りは4%程度であるケースが多い。表面利回りとは、年間家賃÷分譲マンション価格で算出される。4%の家賃を25年支払うと、100%の分譲価格になる。50年支払ったら200%なので、自宅2軒分を負担したことになる。

こんな単純な計算をすると、金利・税金・管理費・修繕積立金・リフォーム代が入っていないと言われることもあるが、どんな計算をしても1.5~2倍の違いを揺るがすことなんてない。些末なことより、少なくても重要な事実を的確にとらえることの方が人生では大事なのである。

国が「持ち家」を推す理由

高齢者の持ち家率は80%を超えている。持家を推進するのは国の政策として、戦後一貫して行われている。それは戦争で家の数が極端に少なかったからだ。地主には賃貸住宅をつくることを誘導し、国民の多くが自宅を持てるように金利や税制を優遇してきたのだ。

2013年に始まるアベノミクス以降、金融緩和が行われたことで、金利が下がり、住宅ローン金利は変動金利であれば0.5%程度になった。ほとんどの人が毎月同じ金額を返済する「元利均等返済」を行うので、金利が高いと元本の返済が進まない。

金利が3%なら1000万円の借入で金利は616万円に及ぶが、0.5%なら90万円なので雲泥の差になる。金利が安い分、購入できる価格も上昇する。上記の2.5%金利が下がるとおよそ48%(=1,616÷1,090)価格が上がっても月の返済額は同じになる。こうして持ち家取得にはかっこうの環境になっている。

実は不動産は税金をかけやすい。取得の際に売買契約とローンの契約(金銭消費貸借契約)をするが、その際に印紙税を徴収される。購入だけでなく、売却する時も同じだけかかる。また、「この不動産は私のものです」という意味の登記をするので登録免許税も不動産取得税もかかるし、持っているだけで固定資産台帳にて土地と建物が管理されるので、固定資産税・都市計画税が毎年かかる。売却したらその利益にも重税が課せられる。

要は徴税側がすべての取引を漏れなく管理しやすいのだ。だからこそ、不動産投資をする人には利益が吹っ飛ぶほどの重税なのだ。こうした重税を払っているのは賃貸住宅の場合はオーナーで、その負担は家賃にはね返っている。住宅ローンより家賃が高いのはこうした重い税制度の結果なのだ。

持ち家は税制も優遇されている。上記のすべての税金が持家(自己居住)だけかなり優遇される。これに加えて、冒頭で説明した住宅ローン控除がある。

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