「家賃はもったいない」と言えるこれだけの理由 そもそも不動産は格好の「徴税対象」と理解せよ

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あなたが賃貸住宅のオーナーなら、どんな品質の建物を建てるだろうか?高品質でコスト高か、そこそこの品質でコスト安なのかという選択だ。例えば、壁の遮音性を高めるにはコストがかさむので、ほとんどのオーナーは安普請な造りにする。

もっとわかりやすく言うと、自分の持ち家より立派にするオーナーはいないだろう。他人が住んで家賃をもらうものは、どこか他人事な仕様で造るものだ。悪くすると、ガスの配管工事を下げるためにプロパンガスを導入するオーナーもいまだにいる。その配管工事分はプロパンガス会社が負担し、その代わりにプロパンガス代で回収されるので、賃貸入居者が都市ガスの約2倍の代金を支払わせられているのが実態となる。(詳しくは、「家賃安くても「プロパンガス物件」要注意な訳」

「分譲仕様」という言葉がある。賃貸が安普請ならば、分譲は自分が住むので、細かくて厳しいチェックを行う。それに見合うだけの仕様が「分譲仕様」なのだ。だからこそ、住み心地が違う。遮音性だけでなく、気密性が高いので冬暖かく、夏涼しい環境を提供するし、水周りの設備も食洗器・オーブン・シャワーヘッド・バスタブの保温性・洗浄便器など標準仕様がまったく違っている。生涯の住居費負担額の差だけでなく、生涯の生活の豊かさも違うのである。

「賃貸派」の人の特徴

先日もある配信番組で持家VS賃貸の討論をした。もちろん私は持家派なのだが、賃貸派の方には持ち家にまつわるトラウマを抱えている人もいる。それは離婚だ。離婚すると、家は必ず売らなければならない。なぜなら、家を配偶者に譲ってもローンの支払いがまるまる残っていて、自分の家の費用も掛かるので、結局清算する以外に方法がないからだ。

その売るタイミングが悪く、資産価値が落ちていたりすると、売却時に損が発生する。住宅の売却が成立するには住宅ローンを全額返済する場合に限られる。家を売る金額が住宅ローンの残債を下回るとその差額を自分で埋め合わさないと売ることすら許されないものだ。離婚したくても、家に価値がなく貯金もなければ離婚できないのだ。

持家の重要なリスクを挙げるとしたら、「資産性」だ。資産性がある物件とは、買った価格から売る際の価格があまり下がらない物件を指す。下がりづらいなら、超低金利で元本返済が急速に進むので、含み損を発生させることはほとんどない。

そして過去の膨大な量のマンションの資産性について私は分析している。そこからわかったことは、「資産性は立地でほぼ決まる」ということだ。都心寄りで、駅近のマンションは資産価値が落ちにくいということで、非常に簡単だ。その法則を忠実に守った人の多くは、マンションを買った時よりも高い価格で売っている。つまり、賃貸よりお得なんて当たり前のことではなく、住居費を負担しないだけでなく、資産を膨らませることも可能なのである。

沖 有人 不動産コンサルタント

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おき ゆうじん / Yujin Oki

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人系・不動産系のコンサルティング会社を経て、1998年に現スタイルアクトを設立。住宅分野において、マーケティング・統計・ITの3分野を統合し、日本最大級の不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティング・事業構築を得意とする。設立当初から運営する分譲マンション価格情報サイト「住まいサーフィン」の会員数は30万人以上。『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』(朝日新書)など著書多数。

 

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