マリノスサポーター「バナナ事件」を考える 第9回 対症療法的な日本、社会に踏み込むドイツ

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つまりリアルに多様化が進んできているのだ。だからこそ、スポーツクラブのメンバーは平等や敬意、寛容といった価値観を、スポーツを通じて日常的に身に付けることにつながるはずだ。そして見るべきは、むしろスポーツが持つ価値観をつかって、社会に影響を与えていこうという動きもドイツにはある。次にそれらを見てみよう。

女性問題にも踏み込むスポーツ

ムスリム(イスラム教)の女性たちは肌の露出を避けた服装が必要で、見知らぬ男性と一緒に行動するといったことができない。移民国家化しているドイツでもムスリム女性をごく普通に見かける。宗教の戒律に対してどれだけ寛容かということは各自異なるが、それでもスポーツ活動をしやすいとは言いがたいようだ。

専門会議「スポーツと健康へのアクセス」の運営スタッフたち

筆者が住むエアランゲン市(バイエルン州、人口10万人)では昨年10月に「スポーツと健康へのアクセス」をテーマにした専門会議が開催された。具体的にはスポーツ(および健康向上)に取組むのが困難なムスリム女性の課題を取り上げたものだ。

 例えば、会議で紹介された「BIGプロジェクト」を見てみよう。「BIG」とは「健康作りにかける運動」というドイツ語を短くしたもので、エアランゲン市のモデルプロジェクトだ。女性による女性のためのヨガ、水泳、ダンス、テニスなど25のスポーツプログラムが組まれ、これによってムスリム女性にとってスポーツを楽しみやすい環境が実現するというわけだ。

 このプロジェクト、同市内のスポーツクラブや州スポーツ連盟のほか、同市のスポーツ局と余暇・文化局のほかに、市内の「市民学校」の3つが協力しあっている。市民学校とはドイツで20世紀初頭から始まった安価で受講できる成人向け学習施設だが、同市にも様々な言語や哲学、歴史、PCスキルなどのコースがある。

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