7位以下の4社はすべてメーカーだ。7位ソニーグループ、8位は同数で富士フイルム、旭化成、パナソニックの3社。この顔ぶれを見て思うのは、企業の事業構造のわかりにくさだ。学生が理解するのに苦労するのは当たり前だ。
いまから30年前のバブル経済の頃(1990年前後)まで、企業の事業はわかりやすかった。ソニーはウォークマンやAV機器で世界を席巻していた。富士フイルムはカメラとフィルムメーカーの著名企業で、社名も富士写真フイルムだった。旭化成は少しわかりにくく、サランラップとヘーベルハウスが有名だが、化学と繊維という祖業を軸に多角化し30年前も住宅、建材、エレクトロニクスなどの事業分野を持っていた。そしてパナソニックの社名は松下電器産業だった。
それから30年。企業の事業領域は変容している。ソニーグループは製造業の枠をはみ出し、ゲーム機や映像・音楽の世界的エンターテインメント企業であり、さらに金融まで手掛けている。富士フイルムはいまだに写真・映像領域の製品を持っているが、医薬・医療機器などへ業容を広げている。旭化成の技術領域も広がっている。例えば、2000年代半ばに成功したホール素子を応用した磁気センサだ。これはiPhoneに搭載された。
そして名前が変わったのが松下電器産業。日本名から2008年にパナソニック(Panasonic)というグローバルブランドの社名に変更するとともに、旧松下電工などグループ企業の合併や、三洋電機の子会社化など、事業の再編を繰り返してきた。バブル期以降を「失われた30年」と形容することがあるが、企業は時代に合わせて変容してきたことがわかる。
メーカー4社の共通点とは?
4社の事業領域は異なるが、学生のコメントはよく似ている。「よく聞く」という言葉が多いのだ。
ソニーグループは「自分の話を丁寧に、興味を持って詳しく聞いてくれた」、「こちらの話を非常に熱心に聴いてくれた」、「技術について興味深そうに聞いてくれた」。富士フイルムは「話を丁寧に聞いてくれた」、「学生の話に興味をもって聞いてくださり、緊張もほぐしてくださった」。旭化成は「研究内容や学業以外での活動に耳を傾け、話を引き出してくれた」。パナソニック「笑顔で話を聞いてくれたため、話がしやすく、聞いてくれているんだなという実感が得られた」。
今回のアンケート調査では「好感を持った面接官」を問い、共通するのが「聞く」という言葉だった。しかし、「不快だった面接官の発言」を調べたアンケートを読むと面接官も千差万別、学生を否定したがる面接官も少なくない。こういう人物は社会人として時代遅れだと思う。面接官を選ぶ際に、人事は肩書ではなく、聞き上手かどうかを基準にすべきだと思う。
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