リニア新幹線と標高3000mの自然の気になる関係 生物多様性維持という観点で懸念を払拭できるか
「私自身は地質学者ではないので、南アルプスの高山植物の根の下にある岩盤の亀裂にある水が地下水の水とつながっているというデータを示すことはできないんです」と増澤教授。「しかし、例えば荒川岳のお花畑はすばらしいところですが、なぜここ、標高3000mのところにお花畑ができるのか。なぜ水気の多い湿地のような状態になっているのか。南アルプスの高山帯の岩石には亀裂が多いことが地質学のグループの研究でわかりました。地表の植物は、岩盤の亀裂に保存され、地中深い地下水と関連している水にも支えられているのではないでしょうか」
増澤教授は「(南アルプスにトンネルが掘られるルートが決まった)10年前から、稜線のお花畑はどうなるのか、というのが一般の市民の方々の心配事だったんですよ。JR東海は、南アルプスの植物は岩石の亀裂に入った水とは関係ない、というデータを出して、私たち研究者や登山者を納得させる必要があります。私は22日の会合でその点を強調しました」と話す。
登山者や高山植物を守る市民の心配
公益社団法人・日本山岳会静岡支部の事務局長、諏訪部豊さん(67歳)は今年8月1日、荒川岳のお花畑を楽しんだ。「黄色のシナノキンバイと白いハクサンイチゲは終わりかけでしたが、黄色いミヤマタンポポとピンクのハクサンフウロが咲き、見ごたえがありましたよ」という。
諏訪部さんも、南アルプスのトンネル工事による影響を心配している一人だ。「なんで山に登るのか。これは永遠のテーマですが、花を見るのを一番か二番目の目的にしている人もけっこういます。花がなくなり、殺伐とした風景になってしまったら、山の魅力はぐっと減ってしまう」
登山者は、山に登ってお花畑をはじめとする風景を楽しむだけでなく、美しい自然、風景を維持保全するための活動に力を入れる。2001年度に発足した「南アルプス高山植物保護ボランティアネットワーク」は、静岡県とともに、シカの侵入を防ぐ防鹿柵(ぼうろくさく)の設置や、土砂の流出を防ぐため、シカが植物を食い荒らした跡にヤシ繊維でできたマットを貼るなどの活動を続ける。
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