静岡リニア「水全量戻し」にこだわる知事の打算 JRに断固反対か、それとも政治判断に持ち込む?

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山梨県内の実験線で走行試験が行われているリニアL0系(撮影:尾形文繁)

手渡された資料の厚さは約5センチメートル。あまりのボリュームの多さに驚いた。

リニア中央新幹線の静岡工区をめぐる問題を議論する10回目の有識者会議が3月22日、国土交通省の会議室で開催された。静岡県は3月12日、JR東海が作成する資料について県の質問や意見を反映するよう国に対して求めた。今回の有識者会議で委員や傍聴する報道関係者に配られた膨大な資料は、県の要望を受けて前回の資料を大幅に作り直したものだ。

湧水全量戻さなくても「流量は維持」

有識者会議は昨年の4月から約1年をかけて、トンネル湧水の大井川への戻し方とトンネルによる大井川中下流域の地下水への影響について科学的、工学的な観点から議論を重ねてきた。

県はトンネル工事で発生する湧水の一部が県外に流出し、大井川流域の水資源に影響を与えかねないとして、トンネル湧水の全量を大井川に戻すよう求めている。JR東海は「原則として全量を戻す」と応じたものの、トンネル湧水を大井川に戻す導水路が完成するまでの間は、湧水は県外に流出する。第10回の会議ではこれまでの議論を踏まえて、全量戻しとはならないものの、「静岡工区内で発生するトンネル湧水を戻すことにより椹島付近より下流側では河川流量は維持される」とする中間報告の素案が示された。

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どれくらいの期間、どれくらいの量が県外に流出するのかという点については、トンネル湧水を大井川に戻す設備が完成するまで約10カ月かかり、その間に山梨県側に流出するトンネル湧水の量は300〜500万立方メートルという数字がこれまでの会議でJR東海から示されている。一方で、大井川下流域の河川流量は年間10〜28億立方メートル、平均19億立方メートルであることも示されている。つまり、河川流量が少ない年でもトンネル湧水が大井川下流域の河川流量に占める割合は0.5%にすぎない。この数字が正しければ、全量戻しにならなくても、流域利水者への影響は小さいということになる。

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