静岡リニア「水全量戻し」にこだわる知事の打算 JRに断固反対か、それとも政治判断に持ち込む?
第10回の会議を受け、県の専門部会にも出席しているという立場から、これまでの会議ではJR東海の情報開示の姿勢に対して厳しい発言をしてきた森下祐一委員(静岡大学客員教授)と丸井敦尚委員(産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)は、それぞれ「JR東海からデータを示していただいた。前進したと理解している」(森下委員)、「大きく前進した」(丸井委員)と発言した。福岡捷二座長(中央大学研究開発機構教授)は、「両委員からの意見をもらい、建設的な協議につながってきた」とほっと一息ついた様子だった。
県のリニアの対策本部長を務める難波喬司副知事も会議後の会見で、「すべてではないが、県の質問や意見のいくつかが反映された」と、会議の内容に一定の理解を示した。
難波副知事は有識者会議の議論に厳しい注文を付けることも多いが、JR東海から新たなデータが出たり、議論が進展したりしたときはきちんと評価している。ところが川勝平太知事は有識者会議を軽視する発言が目立つ。
「知事は住民の気持ちを代弁」
一体どっちを信じればいいのか、難波副知事に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「私は有識者会議が回を重ねるごとに科学的、工学的な議論が少しずつ積み上がってきているという部分を見ている。一方で、知事は地域住民の理解が得られるかという観点から見ている。そういう面から見ると、有識者会議の議論はまだ十分ではない」
川勝知事の発言は自身の意見ではなく、地域住民の気持ちを代弁しているものなのか。引き続き難波副知事に尋ねると、「そうです」と答えた。
翌23日に静岡県庁で、川勝知事の定例記者会見が開かれた。報道陣からは前日の有識者会議に関する質問が相次いだ。地域住民に向けたわかりやすい説明を重視する川勝知事は、科学的、工学的ではなく人の感情に訴える物言いになりがちだ。有識者会議については「JR東海、有識者会議、鉄道局が“黄金の三位一体”になっている」と厳しく批判。有識者会議の座長が会議の終了後に出す「座長コメント」はJR東海の主張を追認しているだけだとして、「3者の関係は別の色の黄金色でくさい関係。ますますくさくなっている」と発言した。
黄金色でくさいもの。受け止め方によってはJR東海、有識者会議、鉄道局の関係を排泄物に例えたようにも聞こえる。県トップの公式の場における発言としては品がないが、はたして地域住民の意見を代弁したものなのだろうか。
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