リニア新幹線と標高3000mの自然の気になる関係 生物多様性維持という観点で懸念を払拭できるか

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10月22日の会合で、JR東海は「自然環境の保全に向けた取組み」と題する資料を示し、地下水位低下による植生への影響について説明した。

それによると、まず地下水が山の深い場所にある尾根部と、浅い場所にある沢部に分けて検討。尾根部では土壌に含まれる水分量は雨により左右され、山の深いところにある地下水から土壌が水を吸い上げる現象はほとんどないことから、「地下水位低下による地表面付近の土壌水分量への影響は極めてわずかであると考えられる」とした。

地下水位が山の浅い位置にある沢部では、地下水位が低下した場合でも、地表面の土壌が含む水分量は雨水によって保たれるため、「多くの植物に影響は生じないと考えられる」が、湿地に繁殖する植物などについては、「影響が生じる可能性がある」としている。

また、過去に行われた長いトンネルの工事により植生への影響があったかどうかを文献調査した結果、「沢部に生息する一部の種において限定的に影響が生じる可能性がある」と結論づけた。

地下水位と地表水との関係(JR東海が10月22日に示した資料から図5.4を引用)

県の専門部会委員の反論と指摘

このJR東海の見解に対し、生物多様性部会専門部会の委員を務める増澤武弘・静岡大学客員教授は席上、「納得できない」と述べた。

後日、私は南アルプスの高山植物の第一人者である増澤教授を訪ねた。「JR東海の説明は、普通の森林、厚い土壌がある場所のモデルを使っているんですね。南アルプスの場合、岩盤の上に薄い土壌の層があり、その下の岩盤に亀裂がたくさんある。亀裂に入った雨水はさらに下の亀裂や断層、地下水までつながっている可能性がある。高山植物は確かに雨水により涵養されますが、岩盤の亀裂にある水も使っている。地下水と地表の雨水は違うという説明は納得できない」と増澤教授は話した。

増澤教授は、静岡県が刊行した本「南アルプスの自然」(2007年3月)の編者を務めた。本には、地質学の専門家グループが南アルプスで地表を約1メートル掘り、地表から約40~50センチの部分を詳しく解析した研究も収められている。

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