千葉・鴨川に出現、22階建て「終の住みか」の全貌 三井不動産が開発、都内から居住者が続々

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施設は分譲ではなく、賃貸(利用権方式)だ。その気になるお値段はいくらか。住戸の広さや入居者の年齢にもよるが、大海原が一望できる14階の住戸(53平方メートル、1LDK)に満78歳で入居する場合、入居一時金は4400万円。加えて各種サービス料(共益費、サービス料、食事代など)が毎月18万5700円発生する。

入居一時金は一括ではなく月払いの方法もあり、その場合の賃料は月28万2000円となる。これにサービス料を足した46万7700円が1カ月の支払総額となる。

当然、アッパーミドルや富裕層が対象となるが、2020年7月のホームページ開設以降、千葉県内や東京都内の在住者を中心に4000件以上の問い合わせがあり、11月の開業時点で100戸超が契約済みだ。「顧客には自宅を売却せずとも利用料を負担できる水準の資産を保有する人たちが多い。今後は年間100戸ペースで契約を進めていきたい」(鳥羽氏)。

高価格帯の老人ホームに注力

内閣府の高齢社会白書によれば、日本の65歳以上人口は2015年の3300万人から2045年には3900万人へ増加する。大半は1人もしくは2人世帯であり、医療・介護体制が充実した終の住みかへのニーズは少なくない。

三井不レジが老人ホーム「パークウェルステイト」シリーズの開発に着手したのは2017年。シニア向け住宅を成長分野と位置付け、開発を担うシニアレジデンス事業部と運営主体となる子会社「三井不動産レジデンシャルウェルネス」を設立した。自立型老人ホームは賃料が月10万円前後の中価格帯の競争が激しく、三井不レジは供給の少ない高価格帯へと舵を切った。

鴨川以外でも2019年6月、東京都杉並区に第1号案件「パークウェルステイト浜田山」を開業した。浜田山は約56平方メートルの住戸に満78歳で入居する場合の価格は8174万円。これにサービス料が月約26万円加わる。医療面では、順天堂大学病院が人間ドックや緊急搬送時の対応を担う。

2024年秋に港区西麻布で開業する「パークウェルステイト西麻布」は、定期健診や治療・入院の対応で慶應義塾大学病院と連携する。施設内のレストランは帝国ホテルが切り盛りする。価格は現時点では不明だが、鴨川や浜田山の比ではなさそうだ。

不動産業界において老人ホームはヘルスケア施設に区分され、すでに投資市場が一定程度形成されている。不況時でも稼働が安定しているうえ、立地や賃料勝負となりがちな賃貸マンションに比べて、運営次第では高い付加価値をつけられる。

三井不レジは健康時、介護時という垣根を越え、終身での高齢者施設というコンセプトで富裕層に訴求する。工夫次第で老人ホームはオフィスやマンションと並ぶビジネスの柱となりそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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