終(つい)の住処(すみか)は個室か相部屋か、低所得者対策で論争激化

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 なぜ、厚労省はユニット型個室の推進に踏み切ったのか。当時の議論に大きな影響を与えたのが、故・外山義氏(つやまただし)(元京都大学大学院教授)だった。外山氏は80年代にスウェーデンの大学で高齢者ケアと住環境をめぐる研究に取り組む。そして帰国後、特養ホームの個室化や認知症グループホームの制度化など、日本の高齢者介護の質の向上を主導した。外山氏の提唱するユニットケアを知り、困難と思われていた特養ホームの個室化が実現できると堤氏は確信したという。

外山氏の指導を受けて03年5月にユニット型施設として移転新築されたのが、鳥取県南部町にある「特別養護老人ホームゆうらく」(居室定員100人、写真)だ。同施設は12の個室を1ユニットとする9ユニットで構成されており、高齢者が個室と共用スペース(リビングルーム)から成る空間で生活を送っている。

入居者は一人ひとりが異なる時間に起床し、思い思いの時間に朝食を取っている。就寝時間も生活リズムに合わせて自由に決めている。

多床室で占められていた以前のゆうらくは、まるで違っていたという。高齢者は全員が同じ時刻に起床し、朝8時に一斉に朝食を取っていた。そのため、「戦場のような慌ただしさだった」と、ユニットリーダーを務める嶋田智子氏は当時を振り返る。ところが現在はまったく異なる。朝食の時間でも、介護職員はゆとりを持って高齢者に接していた。

ユニット型個室の長所はほかにもある。高齢者の尊厳が守られていることだ。個室にトイレが設置されており、多床室のように人前で排せつやおむつ交換を強いられることがない。また、感染症対策としても有効だ。ゆうらくの山野良夫施設長は、「以前はインフルエンザが大流行して施設全体に広がったが、現在の施設ではユニット内で収まり、周りに広がらずに済んでいる」と話す。

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