日本人が知らない「バクラヴァ」銀座に登場した訳 従来菓子にない斬新さ「中東菓子」の魅力とは

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ピスタチオは、旧約聖書に登場するシバの女王が好んだとの逸話も伝えられ、古来から美容効果や健康に良いことが知られてきた。日本でもコロナ禍で外食や海外旅行が減り、「プチぜいたく」として洋菓子店でも値の張るピスタチオを使った比較的値段の高いケーキやお菓子が順調に売れている。大手の製菓会社も、ピスタチオのブームにあやかり、チョコなどを続々と商品化している。

そんなピスタチオを使った中東菓子に目をつけたのが大手デパートだ。松屋銀座は、11月10日から23日の期間限定で、トルコの財閥が運営するスイーツブランド「divan(ディヴァン)」のピスタチオチョコと、ナーディル・ギュルのバクラヴァが催事スペースに登場した。

ナーディルのバクラヴァはクルミ入りとピスタチオ入りの2種類。ピスタチオ入りの場合、2個入りが800円、4個入りが1600円、8個入りが3200円で販売されている(写真:編集部撮影)

ピスタチオロシェというチョコは、1枚のチョコに対して約4割が高級ピスタチオというぜいたくなもの。松屋銀座の担当者は「バクラヴァはバイヤー自身も知らなかったが、すごく美味しく、日本のお客様にも喜んでいただけることを確信している」と期待する。

バクラヴァといった中東のお菓子は、まだまだ日本では知られておらず、業界は、ピスタチオ人気にあやかり、目新しい商品として消費者に知ってもらう好機と判断しているようだ。

バクラヴァだけじゃない!中東菓子の魅力

中東のお菓子には、筆者の大好物である温かいチーズケーキとも言えるクナーフェがある。前に触れた細麺のカダイフでチーズを包み込み、バターを大量にかけて焼き上げ、甘いシロップや砕いたピスタチオをトッピングして、熱いままいただく。一部の中東レストランで食べられるので、是非、トライしていただきたい。

温かいチーズケーキ「クナーフェ」(写真:筆者撮影)

ちまたでも、中東のお菓子を食べられる場所が少しずつ増えている。今年5月には、東京都の荏原町に「ターキッシュ カフェ アンド バードアル(Turkish Cafe & Bar Dogal)」がオープン。愛知県にある日本で唯一のバクラヴァ専門店ベイザーデ バクラヴァから取り寄せたバクラヴァを提供している。

コロナ禍で海外旅行の機会が少なくなる中、食文化を通じて異国情緒に触れたいという層にも、中東のお菓子は受けているようだ。ピスタチオ人気に乗り、今後、お菓子を含めた中東の食文化への注目も高まるかもしれない。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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