日本人が知らない「バクラヴァ」銀座に登場した訳 従来菓子にない斬新さ「中東菓子」の魅力とは

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お菓子の本場であるヨーロッパのものとは異なり、豪快な甘さとバターのリッチな味わいが特徴的。大量に食べるものではなく、チャイと呼ばれる紅茶や粉ごと煮込んだ中東のコーヒーと一緒に、小ぶりなバクラヴァを数個味わって食べるのが一般的である。

焼きたてのバクラヴァ(写真:筆者撮影)

中東では、ヨーロッパから入ってきた生クリームを使ったケーキもあるが、冷蔵庫がなかった時代から食べられてきて、今なお愛されている。澄ましバターや砂糖が多く使われることから、ある程度の長期保存もでき、工芸品のように箱に入れられて売られていることも多い。

発祥は不明だが、版図を広げたオスマン帝国時代にその支配地域へと広がり、中東以外にもギリシャやアゼルバイジャン、アラブ系移民が移り住んだヨーロッパでも一般的に見られるようになっている。実は、ヨーロッパやアメリカでは、日本に先駆けてちょっとしたブームになっている。

大量のバターと砂糖で魅惑の味に

中東に10年以上も暮らした筆者も、長いことバクラヴァだけはその作り方の詳細を知らなかった。2年前に現地の料理学校を訪れた際、ちょうどバクラヴァ作りの授業をやっていて、あの美味しさは、大量のバターを使うことにあったのだと合点した。

バクラヴァに澄ましバターをたっぷりとかける料理学校の生徒(写真:筆者撮影)

講師のシェフは「危険なほどのバターを使うことが美味しさの秘訣」と冗談を飛ばしたが、とんでもない量のバターを使うのは紛れもない事実で、仰天したことを覚えている。

最も一般的なバクラヴァは、長方形や丸型の金属製のトレーに、紙のように薄いフィロと呼ばれる生地を何枚も重ね、中間部分に細かく砕いたピスタチオやクルミなどのナッツをのせ、さらにフィロを重ねる。ナイフで一口サイズの大きさになるよう切り目を入れて溶かした大量のバターを入れてオーブンで焼き上げる。

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