中国で深刻化する労働争議、対処療法に終始してきた現地労務管理のツケ
中国では工会がストライキを先導することは禁じられている。ただ、会社側との交渉に工会が乗り出してくれば解決への道筋もつくが、工会と離れたところで起きる偶発的な未組織のストライキほど厄介なものはない。
団交の場で会社側が交渉の責任者を探しても、最前列に並んだ面々がお互いに顔を右に左に見合い、一瞬、沈黙するという笑えない場面も出てくる。
日系企業駐在員で中国の人事労務問題に長けている人は少ない。信頼できる中国人パートナー側に交渉を任せるか、あるいは中国労務問題に精通した専門家を伴って、徹底的に時間をかけて辛抱強く交渉するかの2つにひとつだ。
日本本社から肩書きだけで応援にやってくる役員などは何の役にも立たない。
最近まで中国に駐在していたトヨタ自動車関係者も、「日本での労働争議の経験は中国人相手には通用しない」と前置きし、「労使協調に慣れた日本と、そういう環境にない中国では、根本的に交渉の方法が異なります。日本企業が中国に本格進出し始めた90年代初頭からすでに20年が経とうとしていますが、いまだに人事労務問題の専門家は育っていません」と付け加える。
ある商社の北京駐在経験者も、「日本人だけでは絶対に解決できません。中国側の協力が100%必要です」と言い切る。
大抵の日本企業は中国工場を日本の分工場と位置づけ、人材の派遣も社内人事の延長線上にある。日本人駐在員をローテーション人事で廻すという陳腐な現象がずっと続いているのだ。ストライキが起こるとうろたえる駐在員が多いのも、その弊害が出たに過ぎない。