「シニア世代の資産運用」がなぜか大失敗するワケ 老後の大切な資産を「何百万も溶かす」人たち

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これらの事例をご覧になって、どう思うでしょうか。自らインターネットなどで情報収集し、ネット証券で取引するのが普通の人たちからすると「金融機関に言われるまま投資するなんて、ありえない」と思えるかもしれませんが、これがシニア世代の資産運用の実情です。

投資信託協会が発表した2020年度のアンケートを見ると、金融機関に勧められて投資信託を買ったという人が全体の40%。しかも高年齢層ほど、割合が高く、60代では52.1%、70代では61.5%です。

これらのデータを見る限り、若い人ほど金融機関を頼らず、年齢が高い人ほどいまだに金融機関を信用しているように思えます。

そういう方ほど、勧められた金融商品を疑いもなく購入してしまいがちですが、これは要注意です。

自分がよくわからないまま相手に任せていると少しずつ損失が発生し、疑問に思って相談しても、「様子を見ましょう」といわれるだけ。「そんなものか」と考えてしまい、そのうち大きく元本を減らして大損してしまう方をたくさん見てきました。

また、そのような方に客観的な立場からアドバイスしても、購入した商品を整理することに対して、躊躇されることが少なくありません。金融機関との付き合いや担当者への情があるからです。

最近では本人がご高齢になり、心配になったお子さんたちがご相談にいらっしゃるケースも増えています。

担当者は運用のプロではなくセールスのプロ

金融機関は、退職金などでドサっと預かり金が口座に入ると、すかさず資産運用の営業をかけます。預金口座は営業リストのようなものであり、担当者は運用のプロではなくセールスのプロです。

そして金融機関が勧める金融商品は、顧客に適したものではなく基本的に「売りたい商品」です。

もちろん投資はリスクがあり自己責任で行うものですが、実は金融庁も以前から、金融機関の姿勢を次のように指摘しています。

「金融機関においては、短期的な利益を優先させるあまり、顧客の安定的な資産形成に資する業務運営が行われているとは必ずしも言えない状況にある。」(平成27事務年度の金融レポート)

つまり、短期的な利益を優先するあまり、顧客属性を無視した商品販売や、ニーズとは違う提案に前のめりになっていると金融庁ですら問題視しているのです。

金融機関が売りたい商品は主に、手数料や運用コストが高い商品です。

投資信託やファンドラップ、新興国債券や仕組債が代表的な商品で、最近は「仕切取引」といわれる、証券会社との相対取引(1〜2%の手数料をのせた価格)での米国株式の売買も提案されているようです。

とくに投資信託やファンドラップは、一度購入してもらえば、ずっと信託報酬を稼げる点で金融機関にメリットがあります。要するに手数料を得やすい商品であるため、ノルマを設け、顧客属性を無視してでも大量に販売しようとするわけです。

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