「シニア世代の資産運用」がなぜか大失敗するワケ

老後の大切な資産を「何百万も溶かす」人たち

さて、本当に人気のある新規公開株がこんなに都合よく回ってくるものでしょうか? 通常は考えられません。こういったセールスがある場合は、だいたい売れ残りの在庫処分のようなものだと考えていいでしょう。

結果はというと、この株式は上場後、株価が大きく下落。しかも話はそれで終わりません。その後、大手生命保険会社の公募増資が発表されると、今度は「これで通信会社の株の損失を取り返しましょう!」と勧めてきました。Bさんはその言葉を信じて通信会社の株を損切りし、約750万円の損失が確定。代わりに生命保険会社の株を買いました。

ところが、この乗り換えが完全に裏目に出ます。通信会社の株は売った直後から値上がり。一方で生命保険会社は不祥事で株価が下落して約860万円の評価損が発生。結局Bさんは約1600万円もの含み損を抱えてしまいました。

知らぬ間に資産を減らす「隠れコスト」

次は60代の男性Dさんのケースです。

Dさんは親の相続をきっかけに証券会社に口座を作り、担当者から勧められて米国株式への投資を始めました。ちょうど米国株式相場が大きく上昇していたこともあり、購入する銘柄がことごとく値上がりしていきました。

ところが、コロナショックで状況は一変。これまでの利益が吹き飛ぶほどの評価損となり、慌ててこれまでの取引を見直してみることにしました。

すると、通常、証券会社を通じて証券取引所に注文を出す「委託取引」ではなく、証券会社との相対で売買をする「仕切取引」で売買をしていることに気づきました。

確かにそのような説明があった気はしたのですが、委託と仕切と言われてもたいして気にしていなかったそうです。

そこであらためて調べると、「仕切取引」で購入した株価は前日株価終値から1〜2%程度高い価格で購入や売却をしており、委託注文に比べると割高な手数料を払っていたことがわかりました。Dさんの場合は金額にして300万円以上も高かったようです。

Dさんは、これまでは商品にさえ気をつければ大丈夫と思っていましたが、まさか取引方法でこんな違いがあるとは知らなかったといいます。

もう1つ、少し大きな金額の事例です。

ある有名企業の元役員であるEさんは、3億円の余裕資金を5年間、銀行が勧める投資信託で運用していました。

5年間でのトータルのリターンは400万円程度。年平均0.27%の利率にしかなりません。当時の相場は悪くなかったのに、これほど低いリターンしか得られないのは不自然です。

実はこの裏には、高額の手数料が隠されていました。購入当初の販売手数料が750万円。毎年の運用手数料が350万円。ただ投資信託を保有していただけで、なんと5年で合計2500万円ものコストがかかっていたのです。Eさんは損はしていないとはいえ、400万円の利益のために2500万円も使ったことになります。最も高い利益を得たのは金融機関です。誰のための投資だったのでしょうか。

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