「僕は長男ですが、父親は末っ子なので『家を守る』という意識はありません。親からのプレッシャーも感じませんでした。2人の妹のうち1人は独身で、もう1人は結婚していますが子どもはいません」
そんな伸一さんが「独身貴族」の自分を省みるきっかけは東北への転勤だった。ちょうど40歳。長く付き合っていた恋人とは別れ、正月や自分の誕生日に「このままでいいのか?」と1人で考えることが増えた。
「僕はマンガ喫茶が大好きです。近所のマンガ喫茶に入ってパソコン画面を見たら、たまたまオーネットの宣伝が出ていたんです。それまでは『結婚相談所なんて利用しなくてもオレは結婚できる』という強がる気持ちがあったのですが、試しに(オーネットの支店を)訪問してみることにしました」
42歳にして初めて婚活
42歳にして初めて婚活をする伸一さんには自分の希少価値を生かそうという発想はなかった。相手の年齢にもこだわりがなく、条件といえば「一緒にいて疲れなくて、老後まで過ごせそうな人」という重要ながらも漠然とした1点のみ。
不慣れな伸一さんはプロフィール写真にも力を入れず、真美さんから言わせると「堅そう」な写真を使ってしまったらしい。おそらく証明写真のような1枚だったのだろう。現代のお見合いでは男性の見た目も重要であり、プロによって若々しく爽やかに撮ってもらうことは必須とも言える。それを実践しなかった伸一さんはお見合い申し込みが殺到することもなく2カ月ほど残っていたのだ。真美さんからすると万馬券のような人材である。
「お見合い申し込みは1カ月に5人までという人数制限があったので、新しく登録した人から攻めていくことにしました。真美もその一人です」
あまりロマンチックではない申し込み理由を明かす伸一さん。真美さんも「堅そうなので話が合わないかも」という気持ちでお見合いに臨んだ。ただし、会ってみたら聞き上手でレディファーストもできる伸一さんに驚き、あっという間に時間が過ぎた。
「レディファースト、ですか? 僕はマンガ好きなので、妹たちから借りて読んでいた少女マンガで学んだのかもしれません。でも、愛情表現は苦手です。愛している、とか言ったことがありません」
真美さんから誉められても客観的な姿勢を失わない伸一さん。その気になれば大いにモテそうな男性だが、友だちのように対等に話して飲み交わせる女性にしか興味を持たないのかもしれない。
「真美はハキハキしていてしゃべりが面白い。でも、結婚の決め手はお酒が好きなことでした」
伸一さんは日本酒派で真美さんはワイン派。ビールやハイボールで乾杯した後は、それぞれの好みの酒を飲んでいるのだろう。左党には最高の結婚生活だ。
「私は甘くないアルコールなら何でも飲めます。ゴハンを食べながらカルーアミルクを飲むような人との結婚は無理ですね」