「介護で地獄を見る人」「成功する人」の決定的な差 誤った知識と深すぎる愛情が老後の幸せを奪う

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介護は、日常生活に支障をきたしはじめたあたりから受けられるものです。そして、身体機能の維持のためのリハビリは、介護保険を使って受けることができ、なるべくはやくから取り組むことで、効果が出やすくなります。

せっかく介護保険料を払い続けてきたわけですから、使わないともったいない。少しでも生活に不便を感じたら、まず身近にある地域包括支援センターに介護支援が受けられないかどうか、相談することが大切なことではないでしょうか。

「その人のため」の深すぎる愛情が地獄を生む

もう1つのポイントは介護による支援を受けていても、支援のやり方などが間違っていて、結局、身体機能の改善が見られないパターンです。

間違った介護で不幸にならないためには、どうすればいいのか。

1つの重要なポイントは、身体機能を維持させることを第一に考えることです。これがまだまだ介護の専門職の方でも医師の方でも理解いただいている人が少ないのが現状です。

身体機能が衰えて歩けなくなると、外出がなかなか難しくなります。「かむ力が低下」すると、好物も食べられなくなります。身体機能が衰えるということは、それだけ、本人ができることが少なくなります。

やりたいことができなくなっていき、さらには「痛いから」「横になるほうが楽だから」と今までやれていたことをやらなくなり、ついには寝たきりに……。また、外に出られないということは、近所の人たちと話す、友人と会うといった社身体機能の維持が、高齢者の幸せの土台になる会的活動ができなくなります。

会話量の減少は脳への刺激低下を招き、認知症のリスクを高めてしまいます。だからこそ、介護の支援で、身体機能の維持は第一に考えてほしいのです。

そのためには、2つ重要なことがあります。

1つは過剰介護をしないことです。

特に身体を動かす機会が減り、身体が衰えやすい高齢者にとって、箸やスプーンを使って食事をすること、外を歩くこと、トイレをすること、すべての日常動作は、筋力の維持に大切なものなのです。

ですから、家族は「できない」から「手を出す」、「時間がかかる」から「やってしまう」ではなく、できるだけ本人がするという方向で考えてほしいのです。

転倒のリスクがあるから「歩かせない」のではなく、どうしたら転倒のリスクを回避して歩くことができるのかを考える。できない=させないという安易な考えを一度捨てて、本人ができるまで待つ、できるように工夫するという意識を持って、身の回りのことは本人にさせることを考える。本人のできることの幅を狭めないためにも、これはとても大切なことです。また、介護を受ける本人も、介護してくれるからといって甘えたり、面倒くさがったり、はなからできないとあきらめたりしないことです。

自分では何もしないのではなく、できるだけ身の回りのことができるように工夫しながら取り組んでいくことが大切になります。

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