「自分の手柄を人に譲る」人がトクする決定的理由 人生100年時代は善人が報われる「透明化社会」

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そういうことの連続が、人間関係がころがっていく大事な要因になっていくのではないでしょうか。これは損得ではなく、人間の知恵ですね。

隠すのではなく、開いて与える

企業も、知識やスキルを内側に隠すのではなく、学べるようにオープンにして「与えていく」と考えてはどうでしょうか。

知識は、検索すれば得られるものです。一方それを身につけるのは、もう一段上の段階でもあります。あるプログラム言語について、ネットを利用して習得するのと、それを使って製品を作れるというのはまた別のことです。実際にその職に就いて、仕事としてやらなければ学べないこともある。

たとえば「上手な文章の書き方」は、知識としてはネットを検索すればいくらでも出てきます。でも、その知識があればすぐに素晴らしい文章を書けるのかというと、そうではありません。やはり、ひたすらたくさん書くしかありません。つまり、どうやったら上手に書けるのか、という知識を隠す必要はないのです。

日本の会社は、つねに閉ざして隠すという文化が強いと思います。しかし、それはあまり意味がなくなってきています。「一歩会社の外に出たら、隠さなければならない」という感覚ではなく、むしろ開くことによってリターンがある、という発想を持つ必要があります。

人事で言えば、辞めていく人を排除するのではなく、また一緒に仕事することもあるよね、という感覚もあっていいでしょう。

僕は、お金があることよりも、技能やスキルがある、また仲間がいることのほうが大事だと思っています。もちろん、体を壊すといった事態に備えて、蓄えがあるほうが安心だとは思いますが。

ただ、最近はやっている、経済的に自立したうえでの早期リタイア、いわゆる「FIRE」には賛成していません。僕が見るかぎり、資本収入だけを重視して生きている人は孤独で、楽しそうではないですよ。人間には承認欲求がありますから、人から承認されないと、幸せにはなれないんです。

FIREを目指してお金稼ぎをするより、良い仲間を作り、普通に楽しく暮らして、自分の技量や能力にプライドを持ち、80歳、90歳まで長く働き続けるほうが、ずっと幸せではないかと思っています。

(構成:泉美木蘭)

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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