保育園は次に来る「コロナの波」に耐えられるのか 終わらない、保育士と親たちの葛藤

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都内の別の認可保育園の園長がコロナ感染を心配する一方で懸念しているのが、”気になる家庭”だ。同園に今、明らかに虐待が疑われる例はないが、育児放棄が心配な保護者がいるという。

その家庭の子(0歳)は、お風呂に入らず前日と同じ服を着てくることが頻繁にあり、連日オムツ交換がされていない状態で登園する。母親はメンタルヘルスを崩している様子で、保育士と話しているうちに、わっと泣き出すことがある。

開園直後の朝7時過ぎに、きょうだい2人の子が預けられ、延長保育も使って夜7時頃に母親がお迎えに来くるため、毎日12時間の保育となる。コロナ前より預ける時間が短くなった家庭や登園自粛する家庭があるなか、その家庭が早朝保育と延長保育を使っている唯一の利用者だ。父母のどちらかが仕事が休みの日でも子どもが預けられるため、担任の保育士から「なぜ、家で見られないのか」「早く帰ってくれればいいのに」という不満の声があがってしまう。

園長は保育士に「目の前にいる子どもの最善の利益を考えるのが保育園の役割。仕事のない日に保護者が預けるということそれ自体がSOSのサイン。虐待や育児放棄につながる可能性があれば、親を支援するためにも預かったほうがいい」と諭すが、「保育経験が浅いと理解されにくい」と頭を悩ませている。

さらに現場を混乱させるのは、「この熱がコロナだったらどうしよう」という恐れだ。日頃から保育園にはインフルエンザやRSウイルスなどの感染対策マニュアルが用意されている。コロナについても厚生労働省は、全国の自治体に対して「保育所等における感染拡大防止のための留意点について」を周知し、園児に37.5度以上の発熱があった場合、解熱後24時間以上が経過し、呼吸器症状が改善傾向となるまでは、保育園は利用を断ることができるとしている。

ところが、前述の家庭は子どもが発熱しても、熱が下がればすぐ登園させてしまう。担任の保育士がルールを説明しても「熱が下がっているのに、何でダメなのですか」と食い下がる。対応に困った保育士から相談された園長が「明らかに呼吸器の症状があるようでなければ、様子を見ましょう。育児放棄が心配だから」となだめるものの、コロナ禍のなかでのジレンマを抱えずにはいられない。

保護者から見た保育園

まさに、保育園も預かるかどうかのせめぎ合いの状態だが、保護者からは保育園がどう映って見えるのか。都内の認可保育園に子どもを預けている三浦貴子さん(仮名、40代)は、「在宅ワークになると、お迎えの時間管理が極端に厳しくなりました」と困惑している。

コロナが流行し始めた頃に保育園からは、「両親が在宅ワークであれば『家庭保育』を」と強制に近い”お願い”があった。両親のうちどちらかが在宅ワークでも家庭保育を”お願い”された。もちろん、厚生労働省も自治体も、在宅ワークの場合に保育園は子どもを預からなくていいとは言及していない。

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