保育園は次に来る「コロナの波」に耐えられるのか 終わらない、保育士と親たちの葛藤

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厚生労働省の「保育所等における新型コロナウイルスによる休園等の状況」によれば、2021年10月14日時点で認可保育園など全面休園している保育園は14か所。これまでの間に感染者が発生した保育園は6803か所、感染者数は職員6486人、保育園を利用している乳幼児9390人となっている。臨時休園のピークは今年9月の185か所だった。

保育園が急に休園となれば当然、保護者は預け先に困る。この問題には実は、かねてより指摘されてきた、土曜保育や休日・早朝・延長保育の運営に通じる課題が含まれている。

コロナ禍で、ますます重要になってくること

認可保育園のコアタイムは、平日に働く平均的な会社員や公務員の出勤時間となっており、各自治体や園の判断で、その前後に早朝保育や延長保育が実施される。しかし、保護者の働き方がこの保育園の開園時間とのミスマッチを起こし、預け先に困る保護者は決して少なくない。

文部科学省の「学校基本調査」によれば、2020年3月に大学を卒業したなかで最も多い就職先が「卸売業・小売業」の6万7544人で、次いで「医療・福祉」の5万6344人、「製造業」(5万1224人)、「情報通信業」(5万126人)も多い。この学年の大卒の就職者は44万6082人であるため、前述の業種だけで全体の5割を占める。

これらの業界は、土日や祝日、早朝夜間が繁忙期である傾向があり、平日だけ働くことが難しい現状がある。病院、介護施設、工場、IT業界には夜勤のシフト労働もある。そうした業界に雇用の受け皿が増えてきた中で、運営時間を柔軟に対応してくるべきだったのではないか。

認可保育園での休日保育の実施率は、全国でわずか4.7%(2018年3月内閣府など3府省調べ)に留まる。そして国は土曜保育の縮小を図るなど、本来のニーズと逆行しているのが現状だ。

運営時間の不足以外に、最小限の状態にある保育士の配置基準や面積基準の引き上げは、コロナ禍の中でますます重要になっているともいえる。

混迷する現場にとって必要な対策を打つには、自治体には限界がある。国は今こそ、早急にバックアップ体制を考えるべきときではないか。

小林 美希 ジャーナリスト

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こばやし・みき / Miki Kobayashi

1975年、茨城県生まれ。株式新聞社、週刊『エコノミスト』編集部の記者を経て2007年からフリーランスへ。就職氷河期世代の雇用問題、女性の妊娠・出産・育児と就業継続の問題などがライフワーク。保育や医療現場の働き方にも詳しい。2013年に「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。『ルポ看護の質』(岩波新書、2016年)『ルポ保育格差』(岩波新書、2018年)、『ルポ中年フリーター』(NHK出版新書、2018年)、『年収443万円』(講談社)など著書多数。
 

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